この記事は約 12 分で読めます。
エンジンオイルと違い、意外と見落とされがちになってしまうのが、ATF(オートマオイル)の交換です。
正式名称は、「オートマチックトランスミッションフルード」と言い、車のAT内に充填されているオイルになります。

ATF(オートマチックトランスミッションフルード)とはどのようなものか?知っておきたい!その役割と種類


ATF(オートマチックトランスミッションフルード)は、車の油脂類の中でも、とても重要な役割を果たしています。
ただ、エンジンオイルとかの油脂類に比べると、あまり役割や種類は知られていないようです。この項目では、ATF(オートマチックトランスミッションフルード)の役割と種類についてお話しました。
エンジンからの動力を伝達
ATF(オートマチックトランスミッションフルード)の最も重要な役割は、トルクコンバーター内に充満されたATF(オートマチックトランスミッションフルード)が油圧の力で、エンジンからの動力を、ミッションに伝える役割を果たしています。
オートマチックトランスミッションには、マニュアルミッションのようなクラッチペダルが無い代わりに、トルクコンバーター(トルコンと呼ばれています)と呼ばれる装置が搭載されています。
このトルクコンバーターは、エンジンとトランスミッションの間にあり、中に充満されているATF(オートマチックトランスミッションフルード)を介してエンジンの動力をミッションに伝えます。
このトルクコンバーターはマニュアル車のクラッチのように明確につないだり切断したりしないので、エンジンが始動している間は常に駆動している。いわゆる「半クラッチ」のような状態でエンジンが作動しているときは常に動いています。
そのせいで、アクセルを踏んでいなくても車が前に進んでしまう性質があり、信号待ちのなどで停止している際には、しっかりとブレーキを踏んでおかないといけませんね。
スムーズなシフトチェンジ
ATF(オートマチックトランスミッションフルード)は、油圧制御装置を作動させる役割を担っています。
オートマチックトランスミッションには、複数の変速ギヤがあり、エンジンの回転数や車速、アクセルの開度に合わせて油圧制御装置によって適切なギヤにシフトチェンジします。
トランスミッションの冷却・洗浄
ATF(オートマチックトランスミッションフルード)は、オートマチックトランスミッション内の熱を吸収し、オイルクーラーに循環させることでトランスミッションの冷却をしており、ギヤ類の焼き付きを防ぎます。
オートマチックトランスミッション内には変速ギヤやクラッチディスクがあり、それが組み合わさって駆動しています。
その駆動する際に、ギヤやクラッチディスクが駆動する際に熱を発しますが、ATF(オートマオイル)はそれらを冷却する働きをしているのです。
また、ギヤ同士の摩擦によって生じた不純物を取り除き、フィルターの役割をするストレーナーまで運んで、トランスミッション内を綺麗に保つ役割も果たしています。
CVTF(CVTフルード) も同じ役割
一方、車にはAT(オートマチック)だけでなくCVT(無段変速機)やDCT(デュアルクラッチトランスミッション)も存在します。
CVTはギヤの代わりに特殊な金属製のベルトを使用したものになります。AT(オートマチックトランスミッション)のようにはっきりとしたギヤで変速するのではないため、段差が無くスムーズに変速することが可能な変速機構です。
ATとCVTは内部構造が全く異なりますが、CVTF(CVTフルード)もATFと役割はほぼ同じになります。
ATF(オートマチックトランスミッションフルード)をなぜ交換しないといけないのか?
結論から言えば、ATF(オートマチックトランスミッションフルード)は定期的に交換しないといけません。
理由は、使用しなくても経年劣化しますし、使用することで汚れていくからです。汚れたままのATF(オートマチックトランスミッションフルード)を使用すると、トランスミッションの性能が低下し、様々な不具合が発生する可能性があります。
具体的にどのように不具合になるかと言いますと、
加速が悪くなる:汚れが溜まったトランスミッションは、スムーズにギヤが入れられなくなり、加速が悪くなります。 燃費が悪くなる:ギヤの滑りや油圧の低下により、燃費が悪化します。 変速時のショックが大きくなる:ATFの粘度が低下すると、変速時の衝撃が大きくなります。 ギヤが入りにくくなる:汚れがソレノイドバルブに付着すると、オイルの圧力が逃げてしまい、ギヤの入りづらさを感じることがあります。 トランスミッションの故障:最悪の場合、トランスミッションが故障してしまい、走行不能になります。最悪の場合、トランスミッションの故障につながり、高額な修理費が必要になるので、きちんと交換するようにしましょう。
ただ、ATF(オートマチックトランスミッションフルード)の交換に関しては、メーカーや車種によって様々な見解があることも事実です。車に付属されている取扱説明書には、「無交換」と明記されているものもあったり、長期間交換しなくても良いとされている車があるのも事実なのです。
メーカーが作っている説明書だけに、どこまで信用していいものか判断が出来かねますが、そのような記載には惑わされないようにしたいものです。メーカーだから正しいとは限らないのです。オイルは使用してもしなくても経年劣化していくものなのです。
ギヤの摩耗によって汚れていきますし、熱で酸化もしてきます。特に日本の都市部の交通事情を考えると、常に渋滞した道路を走らないといけないということもあります。
常に、たいていの車がシビアコンディションに置かれていると言っても過言ではないように思えます。不具合が発生しないうちに、「長期間交換していないし、オイルが汚れているだろう」と思えば、交換するようにしましょう。
ATF(オートマチックトランスミッションフルード)の種類
ATF(オートマチックトランスミッションフルード)には、油種による違いと規格による違いがあります。
特に、規格は多種に及ぶため、自分の愛車に合ったオイルをチョイスすることが大事になってきます。
油種による違い
ATF(オートマチックトランスミッションフルード)の油種は大きく分けて2種類です。鉱物油と全合成油の2種に大別できます。
ただ、昨今のATの多段化(多いものだと10速AT)やメカニズムの進歩によってATF(オートマチックトランスミッションフルード)も低粘度に対応せざるを得ない環境になってきているのです。
そうなると、以前のような鉱物油はほとんど採用されず、全合成油ベースのATF(オートマチックトランスミッションフルード)がスタンダードになってきているのが昨今の状況です。
鉱物油の特徴
天然の原油から精製されたオイルで、ATFのなかでも比較的安価なのが特徴全合成油と比較すると、性能や耐久性は劣る場合がある
全合成油の特徴
化学的に合成されたオイルで、鉱物油よりも高性能で耐久性も高い傾向がある価格は鉱物油より高めだが、性能や耐久性を重視する場合は全合成油がおすすめ
規格による違い
ATのメカニズムの進化によって、車種ごとにATの設計が異なってきています。年を追うごとに車が進化していっているのです。
自動車メーカーは、車種ごとに最適なATF(オートマチックトランスミッションフルード)を設定しています。それを「規格」と呼ぶのですが、実に多種にわたるのです。
DEXRON
ゼネラルモーターズ(GM)が開発した規格で、世界中に広く採用されています。
MERCON
フォード社が開発した規格で、フォード車のATFとして広く使用されています。
JASO規格
日本国内では、日本車全般のAT向けである「JASO 1A」や、低粘度ATFを用いるAT向けの「JASO 1A‐LV」が定められ、広く使用されています。
その他
各メーカーは、独自の規格を定めることもあります。
ただし、多くの車種で汎用性が可能ですが、愛車に合ったものをチョイスできるように交換の際はディーラーなどに相談すると良いでしょう。
規格の違うATFを使用した場合の主な影響
車両への適合性:ATFの規格が車両のATFの適合に合わない場合、トランスミッションの性能が低下したり、故障の原因になる懸念があります。そのため、メーカー指定の規格または推奨規格に合ったATFを選ぶことが重要です。 性能:異なる規格のATFは、摩擦特性、粘度、酸化安定性など、さまざまな性能が異なります。例えば、粘度の低いATFは、燃費の向上やスムーズなシフトチェンジに貢献することがあります。 メンテナンス:ATFの規格によっては、交換サイクルが異なる場合があります。ATFの交換サイクルは、車両のメーカーやATFの規格によって異なります。ATFの交換サイクルは、ATFの性能を維持し、トランスミッションの寿命を延ばすために重要です。
知っておくと得!ATF(オートマチックトランスミッションフルード)の交換方法


実は、先日愛車のZVW30プリウス(3代目プリウス)のATFを交換しました。この項目では、ATFを交換する際に調べた交換の仕方や注意点をお話しました。
下抜き
ATF(オートマチックトランスミッションフルード)の下抜きは、エンジンオイル同様、車をフロアジャッキあるいはガレージジャッキでジャッキアップして、下部のドレンコックを緩めてオイルを抜き取り、新しいオイルを足していくというやり方です。
ただ、一回の交換ではオイルパンに溜まった分だけのオイルしかできないため、数回の作業が必要になってきますので、多少手間と時間がかかってしまいます。
ただ、このやり方だと、オイルパンの底に溜まったスラッジを攪拌させてATを壊しす原因になる心配が無いため、無難な方法だと言えるでしょう。
上抜き
ATFレベルゲージの穴からホースを差し込んで、古いATF(オートマチックトランスミッションフルード)を抜き出した後、新しいATFを注ぎ込むというやり方です。
繰り返し循環させながら交換していく工程から「循環吸引方式」とも呼ばれています。
繰り返し古いオイルと新しいオイルを入れ替えていく方法ですが、吸引した際にオイルパンにこびり付いたスラッジを攪拌させ、ATを壊してしまう原因にもなりやすいのです。
ATを壊してしまうと、程度にもよりますが、10万円~100万円の費用が掛かってしまうので注意が必要です。それに、過走行車(10万㎞以上)や、日頃の定期的なメンテナンスをしていない車は避けた方が良いやり方かもしれません。
圧送交換
ジャッキアップして、オイルクーラーラインから交換する方法です。
圧力をかけ、内部の古いATF(オートマチックトランスミッションフルード)を強制的に排出して循環させます。古く汚れたATF(オートマオイル)が廃油タンクに溜まっていく一方、新しいATF(オートマチックトランスミッションフルード)が自動的に充填されていく仕組みです。
下抜きや上抜きに比べ、作業時間が大幅に短縮されるやり方ですが、圧力をかけて循環させるため、上抜き同様、オイルパンの底に溜まったスラッジや不純物を攪拌させてしまう懸念があるので注意が必要なやり方でしょう。
純正品のATF(オートマチックトランスミッションフルード)をおすすめする理由
上記でお話したとおり、ATF(オートマチックトランスミッションフルード)には汎用性がありますが、メーカーの純正のものを選んだ方が無難でしょう。
メーカー純正は、その車種に合ったものをチョイスしています。
車には車種によってバランスというものがあります。純正でないものを選んで入れてしまい、ATを壊してしまったという例も過去に見てきました。
特にスポーツAT向けの社外品のATF(オートマチックトランスミッションフルード)は、レスポンス重視のオイルになりがちなため、粘度が硬いオイルが大半を占めます。これらのオイルを入れると、滑らなくてレスポンスが良いミッションになるのすが、ATを壊してしまう懸念があるのです。
これらのオイルを使ってミッションを壊してしまっても、当然、メーカーの保証対象外になってしまいますので注意が必要です。
まとめ

いかがでしたでしょうか?
今回のお話は、大まかに言って、
●ATF(オートマチックトランスミッションフルード)とはどのようなものか?知っておきたい!その役割と種類
●知っておくと得!ATF(オートマチックトランスミッションフルード)の交換方法
でしたね。
今回は、ATF(オートマオイル)の役割や種類、交換方法に関してお話させてもらいました。
エンジンオイルと違い、ATF(オートマオイル)は、メンテナンスの中でもあまり気にかけている方が少ないのが現実なのです。
でも、とても重要な役割を果たしていますし、メンテナンスを怠るととんでもないことにもなりかねませんので、ぜひ、参考にして戴いて、愛車がいつも快適であれば幸いです。
ATF(オートマチックトランスミッションフルード)のメンテナンスを怠ると、愛車にとっては良くありません。今回はATF(オートマチックトランスミッションフルード)の重要な役割や種類、どのような交換方法があるのかお話しました。
ぜひ、ご自分の愛車のために参考にして戴ければ幸いです。