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結論:スピードメーターは「実際の速度より遅く表示」されると即不合格!

『スピードメーターなんて、多少ズレていても止まるわけじゃないし大丈夫だろう』と思っていませんか?
実は車検の現場において、スピードメーターの誤差はブレーキと同じくらい厳格に判定されます。特に注意すべきは、メーターが40km/hを指しているのに、実際にはそれ以上の速度が出ている『マイナス誤差』の状態です。
なぜこの状態が即不合格となるのか、その裏にある日本の保安基準の考え方と、メーカーがあえて持たせている『安全マージン』の仕組みから詳しく紐解いていきましょう。
なぜスピードメーターにはあえて「誤差」が設けられているのか?
スピードメーターの役割は、単に速度を伝えることではなく「ドライバーに制限速度を守らせる」ことにあります。
もしメーターが1km/hの狂いもなく正確すぎると、タイヤの摩耗や空気圧の変化だけで簡単に「実際の速度がメーター表示を上回る」という危険な状態になってしまいます。
これを防ぐため、自動車メーカーは設計段階から「実際よりも少しだけ速めの速度を表示する」ようにマージンを持たせ、意図的に安全側へ振っているのです。
「ハッピーメーター」と呼ばれる業界の裏事情
車好きの間では、実速度より高めに表示されるメーターを「ハッピーメーター」と呼ぶことがあります。
これは、例えばメーターが100km/hを指していても、実速度(GPS測定など)では92〜95km/h程度しか出ていない状態を指します。一見、不正確で不便に思えるかもしれませんが、これは「うっかり速度違反」を防ぎ、事故の際の衝突エネルギーを少しでも下げるためのメーカーの配慮でもあります。
車検においても、この「プラス側の誤差」については比較的広い許容範囲が認められています。
なぜメーカーは「実速度より高め」に設定するのか?
速度違反の法的リスクを回避するためもし「メーターより実速度が速い」状態で納車され、オーナーが速度違反で摘発された場合、メーカーの責任を問われかねません。そのため、どんな条件下でも「実速度 > メーター表示」にならないよう、余裕を持った設計がなされています。 タイヤの状態による変動を吸収するため
タイヤは新品時と摩耗時で外径が数ミリ変わります。また、空気圧が低いとタイヤは潰れて外径が小さくなり、回転数が増えるため、メーターはより速い速度を指します。こうした日常的な変化が起きても、常に安全な表示を維持するための措置です。 国際的な保安基準(UN-R39)への適合
現在、多くの国で採用されている国際基準では「表示速度は実速度よりも低くなってはならない」と厳格に定められています。世界中で販売されるグローバルモデルほど、このマージンを確実に取る傾向にあります。
車検で行われる「スピードメーター検査」の具体的な流れ

検査ラインの独特の緊張感の中で、最もドライバーの操作技術が問われるのがスピードメーター検査です。
タイヤを高速で回転させるテスターの上で、針をピタリと40km/hに固定し、タイミングよく合図を送る作業には少しコツが必要です。また、4WD車や車高の低いカスタムカーの場合、事前の知識なしにラインへ入ると車体を傷めたり、思わぬトラブルを招いたりすることも。
ここでは、検査当日に慌てないための具体的な手順と、車種別の注意点をプロの視点でシミュレーションします。
なぜ「時速40km」という中途半端な速度で測定するのか?
「高速道路も走るのに、なぜ40km/hだけでいいの?」と疑問に思うかもしれません。
これは、一般公道での法定速度の基準となる速度であること、そして多くのタイヤやメーターの誤差が顕著に現れ始める速度域であることが理由です。
低速すぎると誤差が判別しにくく、高速すぎると検査中の事故(タイヤのバーストや飛び出し)のリスクが高まるため、安全性と正確性のバランスが取れた「40km/h」が全国共通の測定ポイントとして採用されています。
4WD車や低車高車が注意すべき「テスター」の種類と罠
スピードメーター検査で最も注意が必要なのが、駆動方式によるテスターの違いです。
4WD車の場合:多くの検査場では「4WD対応テスター」が設置されていますが、古いラインや特定のマルチテスターでは、全輪をローラーに乗せる必要があります。
自分の車が「フルタイム4WD」なのか「パートタイム4WD」なのかを把握し、事前に検査官へ伝えておかないと、無理に回してデフやミッションを痛める危険があります。
低車高車の場合:車高を落としている車は、ローラーの間に車体が沈み込む際、アンダーカバーやフロントリップをテスターの縁にヒットさせることがあります。
不安な場合は、事前に「低車高車でも対応可能か」を確認しておくのがプロの自衛術です。
パッシングで合図?検査ラインでの操作と測定のコツ
多くの検査場では、スピードメーターが40km/hに達した瞬間に「パッシング(またはフットスイッチ)」で機械に合図を送ります。
コツは、40km/hに達する直前でアクセルを一定に保つこと。加速中や減速中に合図を送ってしまうと、表示と実速度にタイムラグが生じ、誤差が大きく出てしまいます。
また、最近の電子制御が強い車では、空転を検知してトラクションコントロール(TRC)が介入し、うまく加速できないことがあります。その場合は、事前に電子制御をオフにする手順を覚えておくとスムーズです。
あなたの車はどっち?製造年で違う「誤差の許容範囲」


スピードメーターの合否を分けるのは、実はあなたの車の『誕生日(製造年月日)』です。
2007年を境に法律が改正され、高年式の車ほどメーターの精度に対する要求が非常に厳しくなりました。古い車なら許された誤差も、新しい車では一発アウトになるケースが珍しくありません。
自分がどちらの基準に該当し、具体的に『実速度が何キロから何キロまでなら合格できるのか』。複雑な計算式を介さず、誰でも一目でわかる比較表とともに整理して解説します。
【平成18年以前の車】少し緩めの基準と旧車オーナーへの注意点
2006年(平成18年)12月31日以前に製造された車は、現在よりも少し緩い基準が適用されます。
この時代の車は、メーターが「時速40km」を指しているとき、実際の速度が「31.0km/h 〜 44.4km/h」の間であれば合格となります。 当時はアナログメーターや機械式が主流だったため、今の基準よりも「実速度がメーター表示を上回ること(マイナス誤差)」に対して少しだけ寛容でした。
しかし、旧車はパーツの劣化で針が振れたり、ワイヤーの固着で動きが渋くなったりしやすいため、余裕があるからと油断は禁物です。
【平成19年以降の車】より厳格になった最新基準の数値を整理
2007年(平成19年)1月1日以降に製造された車は、基準がぐっと厳しくなりました。
メーターが「時速40km」を指しているとき、実際の速度が「31.0km/h 〜 42.5km/h」の間でなければなりません。 平成18年以前の車と比べて、上限(プラス側の誤差)が約2km/hほど厳格化されています。
これはスピードメーターの電子化が進み、精度が上がったことが背景にあります。高年式の車でインチアップなどを行う際は、この「わずか2.5km/hの差」が合否を分けることになります。
【一覧表】時速40kmのとき、実速度が何キロなら合格?
計算式を覚える必要はありません。以下の表で、自分の車の合格範囲をチェックしてみてください。
| 製造年月日 | メーター表示40km/h時の「実速度」の範囲 |
| 平成18年12月31日まで | 31.0km/h 〜 44.4km/h |
| 平成19年1月1日から | 31.0km/h 〜 42.5km/h |
どちらの基準でも、下限(31.0km/h)は同じです。
つまり「メーターより大幅に遅く走っている分には10km/h近くおまけしてくれる」のに対し、上限(出しすぎ)については「わずか2〜4km/h程度しか許されない」という、非常に厳しい設定になっています。
「滅多に落ちない」はずの検査で不合格になる3つの原因

普通に街乗りをしている分には、スピードメーターが狂うことなど滅多にないはずです。
それにもかかわらず、なぜ車検の現場では『不合格』の判定が出てしまう車が後を絶たないのでしょうか。そこには、タイヤの摩耗という日常的な変化から、インチアップというカスタマイズの罠、さらには現代車特有の電子センサーの不具合まで、意外な盲点が隠されています。
ここでは、整備士が現場で目にする『不合格のリアルな原因』を3つのポイントに絞って深掘りします。
①タイヤの摩耗と空気圧:数ミリの外径差が大きな誤差を生む
スピードメーターはタイヤの回転数から速度を計算しているため、タイヤの「外径(直径)」が変わると表示に狂いが生じます。
摩耗の影響:新品タイヤ(溝8mm)と交換直前のタイヤ(溝1.6mm)では、直径で約13mmもの差が出ることがあります。タイヤが小さくなると同じ速度でも回転数が増えるため、メーターは実際よりも速い速度を指すようになります。 空気圧の影響:
指定値より大幅に空気圧が低いと、重みでタイヤが潰れ、有効外径が小さくなります。これも「メーターは40km/hなのに、実際はもっと遅い」という誤差を生む原因です。 車検直前に「ギリギリの溝のタイヤ」で挑む場合は、特に注意が必要です。
②ホイールのインチアップ:計算上の「外径合わせ」がズレる落とし穴
ドレスアップの定番であるインチアップですが、実はこれが不合格原因の第1位です。
多くのオーナーは、純正タイヤと外径が同じになるようにタイヤサイズを選びますが、「カタログ上の数値」と「実際の装着時の外径」は必ずしも一致しません。
特に、リム幅に対して細いタイヤを履かせる「引っ張りタイヤ」の状態にすると、サイドウォールが寝る分、外径は計算値よりも小さくなります。
わずか数パーセントのズレであっても、前述した平成19年以降の厳しい基準(上限42.5km/h)では、あっさりと許容範囲をオーバーしてしまうのです。
③センサーやメーター本体の故障:電気式特有のトラブル事例
物理的なタイヤの問題だけでなく、車両側のシステムに原因があるケースも増えています。
車速センサーの汚れ・故障:多くの現代車はABSセンサーで速度を検知しています。センサーに鉄粉が付着したり、内部で断線しかけていたりすると、パルス信号が正しく送られず、針が踊ったり実際の速度と乖離したりします。 メーターパネルの不具合:
針を動かすステッピングモーターの劣化により、40km/h付近で動きが渋くなることがあります。 こうした電気的なトラブルは、テスターの上で一定速度を維持しようとした際に「速度が安定しない」という症状で発覚することがほとんどです。
車検前にセルフチェック!スピードメーターで落ちないための対策

車検当日、テスターの上で不合格を告げられてから対策を練るのでは時間も費用も無駄になってしまいます。
実は、高価な測定器がなくても、手元のスマートフォン一つで『自分のメーターがどれくらいズレているか』を事前に把握する方法があることをご存知でしょうか。
インチアップをした直後や、タイヤの溝が不安な方が、安心して検査ラインに向かうためにやっておくべき最低限の準備と、誰でもできる簡易テストの手順を伝授します。
スマホのGPS速度計アプリを活用した「簡易セルフテスト」
最も手軽で正確なのが、スマートフォンのGPS機能を利用した「速度計アプリ」との比較です。 スマートフォンのGPSはタイヤの回転ではなく、衛星からの位置情報で移動速度を算出するため、タイヤサイズや摩耗の影響を一切受けない「真の実速度」に近い数値を出すことができます。
チェック方法:同乗者にスマホの速度計アプリを確認してもらいながら、メーターを40km/hぴったりに合わせて走行します(※必ず安全な直線道路で行ってください)。 判断の目安:
もしアプリの表示が「43km/h以上」になっていたら、平成19年以降の車は車検に落ちる可能性が非常に高いです。逆に「35〜38km/h」程度であれば、メーカー設定の安全マージン内なので安心して車検に臨めます。
タイヤ新調・サイズ変更直後の「慣らし」と再確認
タイヤを新しくした場合や、ホイールサイズを変更した直後は、特に注意が必要です。 新品タイヤは溝が深い分、摩耗したタイヤよりも外径が大きく、実速度が高く出やすくなります。「以前のタイヤでは大丈夫だったから」という過信は禁物です。
また、タイヤの空気圧が適正でないだけで、1〜2km/h程度の誤差は簡単に変動します。車検の朝には必ずガソリンスタンド等で「指定空気圧」に調整しておきましょう。これだけで、誤差が原因の不合格リスクを最小限に抑えることができます。
まとめ:正確なスピード表示が、あなたの免許と命を守る
スピードメーターの検査は、ただ「車検を通すための儀式」ではありません。
私たちが普段何気なく見ている速度表示は、制限速度を守り、歩行者や周囲の車と安全な距離感を保つための「唯一の指標」です。
特にインチアップなどのカスタムを楽しんでいる方は、自分の車がどれくらいの誤差を抱えているかを把握しておくことが、大切な免許(速度違反防止)と愛車のコンディションを守ることに繋がります。
もしセルフチェックで大きなズレが見つかったり、走行中にメーターの針が不安定だったりする場合は、車検を待たずに信頼できる整備工場へ相談しましょう。正確なスピードメーターとともに、これからも安心で楽しいカーライフを送りましょう!


車検で見落とされがちな項目の一つがスピードメーターですが、実はタイヤ交換やインチアップをしただけで、知らないうちに合格基準から外れてしまうことがあります。
『40km/hで走っているつもりなのに、実際はそれ以上の速度が出ていた』という状態は、車検に落ちるだけでなく、無自覚な速度違反や重大な事故を招くリスクも。
この記事では、年式によって異なる誤差の許容範囲から、検査当日に慌てないためのセルフチェック法まで、車検のプロの視点で分かりやすく解説します。」