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「ブレーキパッドが摩耗して残量が少ないと、車検で引っかかる!」
「車検を受けるお店のスタッフに、ブレーキパッドの残量が少ないと指摘された」という話をよく耳にします。
車検の検査項目であるブレーキの検査内容
車検でのブレーキ検査は、どのような内容になっているのでしょうか?
ブレーキに関する検査内容は、中には一部間違った情報も出回っているようです。車検において実際にはどのような内容の検査になっているのかについてお話しました。
車検時のブレーキの検査の方法
主に、前後ブレーキとパーキングブレーキの利き具合を検査する
車検での検査でのブレーキに関する検査内容は、主に前後のブレーキとパーキングブレーキ(サイドブレーキ)の検査になります。
前後のブレーキ検査のやり方は、「ブレーキテスター」という専用のブレーキの強度などを測定する機器を使用しての検査となります。ブレーキテスターというシャシーダイナモによく似た機器の上に車を載せ、タイヤを回転させながらブレーキを踏み、その制動力(利き具合)を前後それぞれ確かめる検査をします。
パーキングブレーキの検査も、前後のブレーキ検査と同じようにブレーキテスターを用いての検査となります。テスターでタイヤを回転させ、パーキングブレーキをかけて後輪の制動力(利き具合)を確認します。
通常、ほとんどの車に関して、パーキングブレーキは後輪をロックするものです。パーキングブレーキは前後ブレーキと違い、駐車の際に使用します。
ただし、ほんの一部の車両に限っては、パーキングブレーキが前輪に付いているものも存在します。理由はアメリカの一部の州法で「駐車ブレーキは駆動輪に設けること」と定められることに適合するためです。
ブレーキパッドやブレーキフルードの残量は検査項目には入っていない!
よく、「車検にはブレーキパッドの残量を検査されるの?」という質問がありますが、ブレーキパッドやブレーキフルードの残量は車検の検査項目には入っていません。
車検でのブレーキの検査はあくまでの、「制動力(利き具合)」を検査するものです。ブレーキパッドの残量をチェックするものではありません。ブレーキの制動力(利き具合)とブレーキパッドの残量とは、また別の話になります。
車検を実施する箇所にはいろんなところがあります。
・中古車販売店
上記のいくつかの車検を実施する箇所の中でも、「運輸支局や軽自動車検査協会」のような公共機関では、タイヤを外してのブレーキ検査は行われず、ブレーキテスターのみの検査と外装、下廻りの検査のみになるため、ブレーキパッドの残量などわかりません。
極端な話ですが、ブレーキパッドの残量が残り1㎜しか残っていなくても、車検の検査でブレーキの制動力(利き具合)で十分な強度があれば、車検は合格になるのです。
また、「運輸支局や軽自動車検査協会」以外のディーラーや車検専門店、ガソリンスタンドでの車検では、車検と同時に「24ヵ月法定点検」が実施されます。24ヵ月法定点検では、タイヤを外しての「ブレーキ残量のチェック」があります。
車検を行う前の事前見積もりで、店舗のスタッフからブレーキの残量のことを言われるのは、車検を受ける際に車検の前に行う24ヵ月法定点検を無事パスするためと、ブレーキの残量が少なく、実際の車検の検査でブレーキの制動力(利き具合)が不足して、車検が不合格になる可能性があるためです。
それと、車検でなくても、走行中にブレーキパッドの残量が少なく、ブレーキが利かずに事故を起こすのを防止するためでもあるのです。
ブレーキパッドの残量もブレーキフルードの残量も、ブレーキの制動力(利き具合)に大きく関係します。では、すり減って劣化したブレーキパッドをそのまま使い続けるとどのようなリスクがあるのか?次の項目でお話していますので、参考にして戴けると幸いです。
ブレーキパッドを交換するタイミングと、すり減ったブレーキパッドをそのまま使い続けるリスク
ブレーキパッドの残量は、車検の検査項目には無く、別の問題となるものの、すり減ったままのブレーキパッドを、そのまま使い続けるのはお勧めできません。
この項目では、ブレーキパッドを交換するタイミングと、すり減ったブレーキパッドを使い続けることのリスクについてお話しました。
ブレーキパッドを交換するタイミング
ブレーキパッドは、新品のときの厚みが、純正品も社外品も約10㎜です。
このブレーキパッドは走行距離を重ねていくことで、すり減ってしまいます。上記の画像の通り、すり減ってしまって残りが2~4㎜になったときが交換のタイミングです。
ブレーキパッドは安全運転をつかさどる大切なパーツですので、早めの交換をおすすめします。
すり減ったブレーキパッドをそのまま使い続けるリスク
すり減ったブレーキパッドをそのまま使い続けることは、以下のリスクがあります。早めに交換して、安全に走行ができるようにしておきましょう。
ディスクローターが傷つく
ブレーキパッドに使用されている素材は、10~20種類の原材料を配合してつくります。配合される原材料は、それぞれの役割から「結合剤」「補強材」「摩擦調整剤」の3つに分けられます。
これらはブレーキパッド自体に十分な厚みが残っている状態でこそ、制動力を発揮することができます。すり減ってしまったり、劣化してしまうとブレーキが利きにくくなり、使用限度の2㎜を超えるとディスクローターを傷つけてしまう可能性があり危険です。
ブレーキフルードが劣化する
ブレーキパッドがすり減ってしまい、限界値の2㎜を超えることで、ブレーキフルードに影響が出てきます。
「ブレーキパッドとブレーキフルードは別物だし、関係ないじゃないか?」と思われるかもしれませんが、ブレーキパッドの摩耗が限界値を超えると、それを補うためにブレーキフルードは極端に減ります。
ブレーキフルードのリザーバータンクの側面にある、「MIN」もしくは「LOWER」の文字よりも液面が下がっている場合は、ブレーキパッドの点検を行うようにしましょう。
ブレーキが利かなくなる
車種によりけりですが、ブレーキパッドがすり減って限界値を超えると「キーキ!」という音がするようになります。恥ずかしながら僕自身にも経験がありますが、点検をして戴いた車屋さんからブレーキのご指摘を受けていたにもかかわらず、交換せずに放置してしまっていたのです。
そうなってくると、ブレーキが利かなくなり、そのまま運転を続けると大変危険です。ブレーキの利かない車ほど怖いものはありません。
即交換するようにしましょう。
ブレーキパッドの残量を確認する方法
ブレーキパッドが減ってきたなと感じたら、残量を確認するようにしましょう。
この項目では、ブレーキパッドの残量を確認する方法についてお話しました。
点検窓から目視で確認
ブレーキを構成するパーツには、ブレーキキャリパーというディスクローターを挟んだり押したりすることで、ブレーキを作動させるパーツがあります。(片押しと対向とがある)
そこの箇所には、「点検窓」といった中を確認できる窓がついている場合があり、そこから覗いて中に取り付けられているブレーキパッドの残量を確認することができます。
この点検窓がある場合と無い場合がありますが、無い場合はキャリパーの隙間から覗いて確認することもできます。
ブレーキフルードの残量から推測する
先述したとおり、ブレーキフルードが極端に減る場合は、まずブレーキパッドがすり減っている可能性が高いので、そこから推測することができます。
ブレーキフルードが極端に減る原因は、リザーバータンク自体が破損しているか、もしくはブレーキパッドが摩耗して限界値を超えている場合に起こります。
ブレーキフルードの残量が極端にへっていたら、リザーバータンクの破損か、ブレーキパッドを疑ってみて下さい。
パッドウェアインジケーターを利用する
ブレーキパッドには、適切なブレーキパッドの交換時期を知らせてくれる「パッドウェアインジケーター」というものがあります。
これは、ブレーキパッドの摩耗具合が限界に近づいたことを警告する部品です。パッドの残量が2㎜に近づいてくると、「キーキー」という金属音がしたり、パーキングブレーキを引いていないのに、ブレーキ警告灯が点灯したりして、パッドを交換するよう知らせてくれます。
ただ、ブレーキは安全運転をつかさどる大切なパーツです。警告とありますが、これを利用する前に普段からブレーキパッドの残量を気にしておき、早めに交換するようにしましょう。
ブレーキパッドの摩耗を抑える方法とは?
「できれば、ブレーキパッドの摩耗を抑えるようにしたい!」
運転の仕方や車の使い方によっては、ブレーキの消耗を促進してしまったり、抑制できたりするものです。この項目では、ブレーキパッドの摩耗を抑えて、長持ちさせる方法についてお話しました。
「急ブレーキ」をかけない
ブレーキパッドは、ブレーキを使用するごとに少しづつ摩耗していくものです。ごく自然な使い方で摩耗するのは仕方無いこと。
急ブレーキを多用したりすると、ブレーキパッドの摩耗は当然早くなります。急ブレーキを使わずにすむように、先行車との車間距離を十分取るようにするとか、余裕を持って運転するようにすれば、摩耗を遅らせることは十分可能です。
ラフな運転をしない
先述した急ブレーキもそうですが、乱暴な運転をすることでブレーキパッドの摩耗は早くなります。出しすぎたスピードから車を制動するのに、強くブレーキを踏むシーンが増えたりするものです。
通常の大人しい運転をしていれば、必要以上のブレーキパッドの摩耗はありません。他車や歩行者を思い遣った運転をしていれば、ブレーキにとっても優しい運転になるでしょう。
エンジンブレーキやBレンジを利用する
下り坂でブレーキを多用すると、ブレーキパッドの摩耗を早めるだけでなく、「フェード現象」や「ベーパーロック現象」を誘発する元になり、危険です。
通常のガソリン車やディーゼル車であれば「2nd」ギアを使ったり、ハイブリッドカーであれば「Bレンジ」を使ったりすれば、ブレーキを多用せずに下り坂を下ることができます。
ブレーキパッドの交換費用の目安と交換費用を安く済ませる方法
ブレーキパッドは、安全をつかさどる大切な部品だけに、きちんと交換はしておきたい。でも、かかる費用はできるだけ安く済ませたい!
でも、いったい、いくらぐらいかかるんだろう?と不安になりますよね。
この項目では、ブレーキパッドの交換費用の目安と、交換費用を安く済ませる方法をお話しました。
交換費用の目安
ブレーキパッドの本体の費用は、車一台分だと、フロントとリヤの左右両輪分での価格となります。ブレーキパッド本体だけでなく、交換工賃は別途かかります。
ディーラ―だとブレーキパッド本体も純正品になることもあり、本体と費用も高くなる傾向にあります。また、以外と高いのがガソリンスタンドで交換した場合です。
交換費用を安く済ませる方法
ブレーキパッド本体と交換工賃が比較的安いのは、オートバックスやイエローハットなどのカーショップが安い傾向です。
一番安く済むおすすめの方法は、Amazonや楽天の通販サイトで純正採用されているメーカーのものを購入し、車検の際に交換してもらう方法です。
僕の30プリウス(ZVW30)だと、純正品は曙ブレーキのものです。だいたいフロント左右だけで4,000~5,000円ぐらいでしょうか。工賃は業者にもよりますが、6,000円ぐらいですね。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
今回のお話は、大まかに言って、
●車検の検査項目であるブレーキの検査内容
●ブレーキパッドを交換するタイミングと、すり減ったブレーキパッドをそのまま使い続けるリスク
●ブレーキパッドの残量を確認する方法
●ブレーキパッドの摩耗を抑える方法とは?
●ブレーキパッドの交換費用の目安と交換費用を安く済ませる方法
でしたね。
車検のブレーキの検査内容には、ブレーキパッドの残量の検査はありません。でも、すり減ったまま車に乗り続けることへのリスクは十分ご理解戴けたと思います。
「車検に通るから交換しなくてもいいや!」というのではなく、早めに交換して安全運転するようにしましょう。
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車検のブレーキに関する情報には様々な意見がありますが、今回は、車検におけるブレーキの検査内容と、ブレーキパッドの関係を正しく徹底解説してみました。