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改造車やカスタムカーを公道で楽しむためには、「構造変更の諸手続き」が必要になります。

構造変更の概要と、諸手続きが不要なケース・必要なケース


趣味で愛車をカスタムしたりチューニングしている場合、それを公道で走らせたければ「構造変更」の手続きが必要になってきます。
ただ、場合によっては手続きが不要なケースもあります。この項目では、諸手続きが不要なケースと必要なケースについてお話しました。
構造変更とは?
構造変更とは、通常であれば検査には通らない車に対して行われる検査のことです。登録されている自動車の構造を改造(変更)して、安全基準を満たす範囲で変更する手続きのことを言います。
例えば、車を改造した場合、通常の車検では通らないことがあります。オーバーフェンダーやエンジンの排気量アップなどがそれに該当します。それら趣味のカスタムやチューニングだけではなく、介護のための車いすに対応するスロープ等を取り付けた場合でも検査が必要になります。
以上のような何等かの理由があって車の構造を変えた場合に受ける車検のことを「構造変更」と呼びます。
構造変更検査とも呼ばれ、改造によって故障や事故を起こす要因となるケースがあるため、走行しても問題ないか確認する役割を担っています。
構造変更の対象となる変更には以下のものがあります。
乗車定員の変更
車体の形状の変更
積載重量の変更
燃料の種類の変更
構造変更は、車を登録している本拠地を管轄する運輸支局で手続きを行う必要があります。この検査にはユーザー車検と同じように、事前の予約が必要であり、検査に合格することで車検証をもらうことができます。
構造変更の諸手続きが不要なケース
国土交通省が運営する「自動車検査登録 総合ポータルサイト」の文言によると、「使用過程における自動車について、軽微な変更となる自動車部品の取付については、構造等変更に係る諸手続きを簡素化し、平成7年11月22日から実施しました。」とあります。
この、「使用過程における自動車」とは、新規登録を含まない、既に登録が行われて使用されている自動車のことを言います。
構造変更をした場合でも、中には諸手続きが不要なケースもあります。諸手続きが不要なケースは以下の通りです。
- 自動車部品を装着したときに、車両の寸法(長さ、幅、高さ)及び車両重量が一定範囲内である場合
車種 | 長さ | 幅 | 高さ | 車両重量 |
小型自動車・軽自動車 | ±3㎝ | ±2㎝ | ±4㎝ | ±50kg |
普通自動車・大型特殊自動車 | ±3㎝ | ±2㎝ | ±4㎝ | ±100kg |
自動車の構造変更における「軽微な変更」とは、上記の表の数値内のように、車両の寸法や重量が一定の範囲内にある場合、構造変更の手続きは不要で、車検証の記載変更のみで済む場合があります。
ただし、これらの軽微な変更となる自動車部品を装着した場合であっても、道路運送車両の保安基準に適合していることが必要であって、我々ユーザー側で管理していかなくてはなりません。軽微な変更というのは、あくまでも車検に通るというのが前提なのです。
2.指定する自動車部品を溶接またはリベット以外の取付方法により装着した場合
指定部品を溶接やリベット以外の方法で装着した場合も、「軽微な変更」に該当し、構造変更の手続きは不要です。また、主な指定部品は以下の通りになります。
主な指定部品の例
機能的部品
- 身体障害者用操作装置
- エア・バッグ
- 牽引用トレーラー・ヒッチ
- ショック・アブソーバー
- ストラット式ショック・アブソーバー
- マフラー、排気管
- タイヤ、タイヤ・ホイール 等
装飾的部品
- ル―フラック・キャリア
- エア・スポイラー、エア・ダム
- グリル・ガード、ドア・プロテクター
- オーディオ類、ナビゲーションシステム
- アンテナ、ラダー、トゥバー等
構造変更の諸手続きが必要なケース
先述した「軽微な変更」における諸手続きが不要の場合と違い、構造変更の諸手続きが必要なケースは以下の通りになります。
- 大幅なサイズ変更により、許容範囲を超えている場合(長さが3㎝、幅が2㎝、高さが4㎝、小型自動車・軽自動車だと、重量が50kg、普通自動車・大型特殊自動車だと100kgを超える変更の場合)
- リアシートの撤去等による乗車定員の変更
- エンジンの排気量アップ等による排気量の増大
- キャンピングカーやオープンカーへの変更
- リフトアップによる車高アップ
車の改造などで、上記に該当する場合は、構造変更の諸手続きを行う必要があります。
構造変更の手続き方法


構造変更の手続きの方法は、住んでいるところを管轄する運輸支局や自動車検査登録事務所に必要な書類を提出する必要があります。
また、構造変更の手続きには事前の「書類審査」と実際の車を持ち込んで検査を行う「実車検査」の二段階に分かれています。改造車に対しては通常の車検よりも、それだけ厳しく検査されるということなのです。
特に昨今は、世界的なCo²削減のご時世もあり、趣味のカスタムカーに対しては厳しくなってきています。検査に無事合格するためにも、書類はしっかりと詳しく記入するようにしましょう。
構造変更は車検時に行うのが効率が良い
車検を受けた直後や、まだ車検が1年以上残っているのに構造変更を行うと、車検の残り期間を切り捨てて継続検査を受けることになります。
車検の時期に合わせて構造変更をすることで、効率が良く無駄が無くなります。構造変更の内容によっては、自賠責保険や重量税、自動車税の金額が変更になることがあります。
このうち、規定の残存期間があれば、自賠責保険と自動車税は月割り計算で還付されます。ただし軽自動車税に関しては月割り計算還付はありません。また、重量税は還付がありませんので、二重に納める形となってしまい、勿体ないので注意しましょう。
構造変更に必要な書類
構造変更の諸手続きに必要な書類は以下の通りです。
- 申請書
- 自動車検査証
- 自動車検査票
- 点検整備記録簿
- 自動車損害賠償責任保険(共済)証明証
- 使用者の委任状(委任事項:自動車検査証記入・構造等変更検査)
- 所有者の委任状(構造等変更検査に伴い、型式、車台番号又は原動機の型式を変更する場合)(委任事項:変更登録)
- 手数料納付書※1
- 自動車重量税納付書※2
- 納税証明書※3 ※4
※1手数料納付:自動車検査登録印紙を貼付、キャッシュレスの場合はその旨記載
※2手数料納付;重量税印紙を貼付、キャッシュレスの場合は不要
※3登録自動車は原則不要
※4地方税のシステムに反映されるまで相応の日数を要する場合があり、確認できない場合は従来通り証明書の提示が必要になります。
構造変更にかかる費用
構造変更後の車検には、以下のような手数料が必要になります。
- 構造変更検査手数料(小型車の場合):2,000円
- 構造変更検査手数料(小型車以外の場合):2,100円
- 乗用車継続検査(小型車の場合):1,700円
- 乗用車継続検査(小型車以外の場合):1,800円
先述しましたように、車検のタイミングによっては、手数料が二重になってしまうことがあります。構造変更は車検のタイミングで行うようにした方が効率的です。
構造変更を行うことに対するメリット・デメリット


改造車やカスタムカーは構造変更を行わないと、公道を走ることができません。構造変更は必要なことではあるのですが、やはりメリットとデメリットがあります。
それを覚悟することも必要なのです。
メリット
構造変更を行うことに対するメリットは以下のようなことが予想できます。
- 車を好きなようにカスタムすることができる
- 車の重量が軽くなり、重量税が安くなる
カスタムした愛車を構造変更することで、公道を走ることができます。整備不良でキップを切られる心配も無いので、堂々としていられますね。
また、車内の内張を剥がし軽量化をすることで車重が軽くなることもあります。そうなると重量税も安くなる可能性もありますね。
デメリット
構造変更を行うことで、デメリットも予想できます。
- 税金が高くなることがある
- 改造の内容によっては、セルフメンテナンスが必要になる
- セルフメンテナンスが出来ない場合は、余計に費用がかかる
排気量アップなどで、エンジンの排気量が増大すると、自動車税や重量税が高くなります。自動車税や自動車重量税の金額は、排気量や自動車のサイズ、重量によって変わります。
また、カスタムの内容によっては、セルフメンテナンスが必要になります。セルフメンテナンスが出来ない場合は、専門ショップにメンテナンスを依頼する必要があります。
僕の若い頃の友人に、初代のフェアレディZ(S30型)の改造車を所有している人がいました。大阪にある某有名ショップのコンプリートエンジンを載せたそのS30Zのエンジン仕様は、L28改3.1Lツインターボのキャブ仕様でした。元々、5ナンバーであるそのS30Zは、構造変更申請を行い3ナンバーを取得しました。その後に大ヒットした漫画の「湾岸ミッドナイト」に出てくる「悪魔のZ」と同じ仕様だったのです。

その後も「公認車検」を取得していました。時代はまだ80年代だったため、手続きには今よりも手間がかかったようです。しかし、車を維持するのにお金が凄くかかっていたこともあり、結婚と同時に泣く泣く手放しました。
愛車をカスタマイズすることは、以上のような維持費がかかってくるため、それなりの経済力と覚悟が必要です。それができないのなら、カスタムは控えるべきでしょう。
まとめ

いかがでしたでしょうか?
今回のお話は、大まかに言って、
●構造変更の概要と、諸手続きが不要なケース・必要なケース
●構造変更の手続き方法
●構造変更を行うことに対するメリット・デメリット
でしたね。
構造変更の仕方や必要書類、メリット・デメリットについてお話しましたが、構造変更には、書類や手続きよりもそれなりの経済力と覚悟が必要なのかもしれません。
愛車を好きなように改造して所有することはそういうことなのでしょう。
構造変更をせずに、改造車を公道で走らせると整備不良で違反となり、怖い罰金や行政処分があります。そうならないようにしっかりと構造変更を行って、堂々と公道を走ったほうがスッキリしますよね。
今回は、構造変更に関することを易しくかみ砕いてお話しました。お役に立てれば幸いです。