GR86とは明確に異なる『スバルの流儀』。新型BRZ(ZD8)試乗記|2.4L FA24エンジンが乗り手に問いかけるもの

この記事は約 10 分で読めます。

ライター

先に試乗したトヨタ GR86(ZN8)の興奮がまだ記憶に新しい中、ようやくスバル BRZ(ZD8)のステアリングを握る機会に恵まれました。

同じ工場で生産され、同じFA24型エンジンを搭載するこの2台は、スペック表の上では「双子」のように見えます。しかし、実際にシートに身を預け、クラッチを繋いだ瞬間にその印象は一変しました。

そこには、トヨタが追求した「FRらしい華やかな楽しさ」とは一線を画す、スバルらしい実直でストイックな「競技屋」としてのプライドが息づいていたのです。

今回の試乗では、2.4Lへのボアアップという進化が、この車を単なるスポーツカーから「乗り手を選ぶマシン」へとどのように変貌させたのか、その真実を丁寧に紐解いていきたいと思います。

ピュアスポーツの枠を超えた「競技車両」としての素性

ライター

スバルが送り出した2代目BRZ(ZD8)は、先代のコンセプトを継承しながらも、その中身は驚くべき進化を遂げていました。

実際に試乗して真っ先に感じたのは、この車が単なる日常の移動手段としてのスポーツカーではなく、サーキットや競技の現場を強く意識した「走るための精密機械」であるという事実です。

徹底した低重心と、理想を追求するシートポジション

BRZのドアを開け、シートに腰を下ろそうとした瞬間、その圧倒的な着座位置の低さに驚かされます。乗降性や居住性といった「快適性」をある程度犠牲にしてでも、運動性能の要である「超低重心」を貫くスバルの姿勢が、ここにはっきりと現れています。

特に印象的だったのは、自分に最適なシートポジションを見つけるまでのプロセスです。

ステアリング、ペダル、シフトノブ。これらすべてがドライバーを中心に緻密に配置されているがゆえに、ミリ単位の調整が求められます。しかし、ひとたびポジションが決まれば、車との一体感は格別なものとなります。

この「容易に自分を合わせさせてくれない頑固さ」こそが、本格的なピュアスポーツの醍醐味と言えるでしょう。

 

「ボアアップ」という手法がもたらした高回転型の特性

ZD8の最大のトピックは、排気量が2.0Lから2.4Lへと拡大されたFA24型エンジンの採用です。

特筆すべきは、その排気量アップの手法です。ピストンのストローク(行程)はそのままに、ボア(内径)を広げる「ボアアップ」という手法が取られています。

この「ショートストローク・ボアアップ」は、エンジンチューニングの世界では高回転型エンジンを仕立てる際の王道です。実際にアクセルを踏み込むと、初代の86×86というスクエア型エンジンよりもさらに力強く、それでいて高回転まで澱みなく吹け上がる特性を手にしていることが分かります。

スバルが単にパワーを求めただけでなく、あくまで「高回転域での官能性」にこだわったことが、このメカニズムの選択からも見て取れます。

 

 

2.4Lエンジンの強大なパワーは、公道でどう感じられるか

ライター

排気量が2.4Lへと進化したことで、BRZは全域で圧倒的なトルクを手にしました。

しかし、その進化は必ずしも「扱いやすさ」だけをもたらしたわけではありません。むしろ、ドライバーに対してより高度な自制心と操作を求める、硬派な一面が浮き彫りになっています。

「踏み切れる楽しさ」と引き換えに手に入れた圧倒的トルク

初代モデル(ZC6)の2.0Lエンジンは、パワー不足を指摘されることもありましたが、一方で「公道でアクセルを底まで踏み切れる楽しさ」がありました。高回転まで使い切って走る、ライトウェイトスポーツらしい軽快な喜びです。

対して新型(ZD8)の2.4Lエンジンは、常用域から非常に力強く、加速の勢いは先代とは比較になりません。しかし、あまりのトルクの太さに、公道ではアクセルを全開にする場面が極端に少なくなってしまいました。

「踏みたくても踏めない」——この溢れるパワーを掌(たなごころ)に収めきれない感覚は、純粋な速さと引き換えに失った、贅沢な悩みとも言えるでしょう。

 

余裕ある排気量が、時にドライバーの余裕を奪う理由

ディーラーの営業担当の方は「排気量に余裕があって乗りやすいですよ」と勧めてくれるかもしれません。

確かに、巡航時の追い越しや坂道などは楽になりました。しかし、スポーツ走行においてはこの「余裕」が、逆にドライバーの「心の余裕」を削る瞬間があります。

わずかなアクセル操作で車が敏感に反応し、瞬時に速度が乗ってしまうため、一瞬の油断も許されない緊張感が走ります。特にFR(後輪駆動)特有の、コーナー出口で駆動力が路面を蹴る感触や、LSD(リミテッド・スリップ・デフ)が効き始める瞬間の挙動は、先代以上にダイレクトです。

このパワーを持て余すことなく、ラインを正確にトレースして走らせるには、乗り手側にも確かなスキルと覚悟が求められるのです。

 

 

多気筒化・ターボ化への期待と、現在の車造りが抱える課題

ライター

BRZのポテンシャルを高く評価すればするほど、ファンの間では「さらなる理想」を求める声が止みません。その最たるものが、多気筒化やターボ化への期待です。

6気筒エンジンを望む声と、メーカーが直面する規制の壁

「どうせ2.4Lにするのなら、4気筒ではなく6気筒の水平対向を」——。かつてのスバル車を知るユーザーから、こうした声が上がるのは当然かもしれません。

スバルには過去、滑らかな回転フィールを誇る6気筒ユニットが存在していました。

しかし、現代の自動車開発において、それは極めて困難な選択です。世界中で厳格化される排出ガス規制やCo2削減目標、そして開発コストの問題が、メーカーの前に立ちはだかっています。

今や大手メーカーですら2.5Lクラスは4気筒が主流であり、独自の水平対向エンジンを維持し続けること自体、奇跡に近い企業努力が必要なのです。

「造れる技術」はあっても「造れない環境」にあるという現実を、私たちは理解する必要があります。

 

メーカーに代わって夢を叶えるチューナーたちの存在

メーカーが環境対応に追われる一方で、その「足りないピース」を埋めてくれるのがチューニングメーカーの存在です。

HKSやTRUST(トラスト)からは、ZD8専用のボルトオン・ターボキットが既に発売されており、これらを装着することで300馬力を超える出力を手に入れることが可能です。

排ガス規制という高い壁に阻まれ、メーカーが純正で出せなかった「パワーの真実」を、アフターパーツが補完する。これは決して純正を否定するものではありません。

むしろ、ベースとなるZD8の車体とエンジンの素性が極めて優秀だからこそ、こうしたカスタマイズの文化が花開いているのです。自分好みに仕立て上げる「余白」が残されていることも、この車の大きな魅力の一つと言えるでしょう。

 

 

納得のグレード選び:性能を使い切るための選択肢

ライター

BRZ(ZD8)のグレード構成は、所有する喜びを最大化する豪華な仕様から、実戦を想定したストイックなものまで、乗り手の目的に応じて明確に分けられています。

STI Sportが提供する「ゴールドブレンボ」の価値

最上級グレードの「STI Sport」を選ぶ最大の動機は、やはり足回りの充実ではないでしょうか。特に注目すべきは、メーカーオプションで設定されている「brembo製ブレーキ」です。

かつてのインプレッサなどを彷彿とさせる「ゴールドキャリパー」は、クルマ好きにとって永遠の憧れです。

この装備を後付けしようとすれば60万円以上の費用を覚悟しなければなりませんが、新車時のオプションであれば22万円(税込)という、驚異的なコストパフォーマンスで手に入ります。

日立Astemo製SFRDフロントダンパーと相まって、質感の高い走りと制動力を両立した、まさに大人のためのスポーツグレードと言えます。

 

競技への最短距離を走る「Cup Car Basic」

一方で、装飾を削ぎ落とし、走る機能に特化した「Cup Car Basic」という選択肢があるのもスバルらしい配慮です。

ロールケージが標準装備されたこのグレードは、文字通りワンメイクレースなどの競技に参加することを前提としたパッケージングです。エアコンなどの最低限の快適装備は備えつつも、余計なものを排除したその姿は、ZD8が持つ「競技車両のベース」としての本質を最も純粋に体現しています。

自分がどうこの車と向き合いたいのか、その答えがグレード選びに直結します。

TOYOTA GR86(ZN8)&SUBARU BRZ(ZD8)には鍛造ホイールを履かせたら走りがさらに良くなる!鍛造ホイールを履くメリットと、おすすめの鍛造ホイールをご紹介

 

まとめ:BRZ(ZD8)は、車との真剣勝負を望む人のための1台

今回の試乗を通して強く感じたのは、BRZ(ZD8)がもはや「誰にでも勧められる手軽なスポーツカー」の枠に収まっていないということです。

2.4Lへと排気量を上げたことで手に入れた圧倒的な動力性能、そして一切の妥協を排した低い重心とシートポジション。これらは、乗り手に対しても同等の「熱量」と「スキル」を要求してきます。公道でその牙を剥く瞬間、この車とどう対話するか。それは、電子制御に守られた現代の車において、極めて稀有で贅沢な挑戦と言えるでしょう。

生産終了や電動化の波が押し寄せる今、こうした純粋な内燃機関のピュアスポーツに乗れる時間は、決して長くはありません。

だからこそ、自分の意志でこの「乗り手を選ぶマシン」をねじ伏せ、一体となる喜びを知る人にとって、BRZは生涯忘れられない一台になるはずです。

 

スバル BRZ(ZD8)ギャラリー

[SUBARU BRZ 主要諸元] 型式:3BAーZD8 (グレード:STI Sport 6MT)
車両重量(kg):1,270〈1,280〉
車両総重量(kg):1,490〈1,500〉
燃費     :11.9〈11.9〉
市街地モード :8.0〈8.0〉
郊外モード  :12.8〈12.9〉
高速道路モード:14.2〈14.1〉

最小回転半径(m):5.4

[エンジン仕様詳細] 型式:FA24
総排気量:2,387
種類:水平対向4気筒
使用燃料:無鉛プレミアムガソリン
内径×工程:94.0×86.0
最高出力(ネット)kW(PS)/rpm.:173(235)/7,000
最大トルク(ネット) N・m(kgf・m)/rpm.:250(25.5)/3,700
燃料タンク容量(L):50

[車両寸法・定員] 全長×全幅×全高(㎜):4,265×1,775×1,310(アンテナを含む数値)
ホイールベース(㎜):2,575
トレッド フロント/リヤ(㎜):1,520/1,550
最低地上高(㎜):130
室内(長さ×幅×高さ)(㎜):1,625×1,480×1,060
乗車定員(名):4

[足回り/ブレーキ/駆動方式] サスペンション(フロント):マクファーソンストラット式コイルスプリング
(リヤ)  :ダブルウィッシュボーン式コイルスプリング
ブレーキ(フロント/リヤ)   :ベンチレーテッドディスク/ベンチレーテッドディスク
駆動方式                           :FR(後輪駆動方式)

 

 

スポンサーリンク



愛車を高く売りたい!車一括査定サイトのおすすめを徹底分析・比較 絶対に損をしない売り方とは?

愛車を高く売りたい!車一括査定サイトのおすすめを徹底分析・比較 絶対に損をしない売り方とは?