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今更ながらGR86(ZN8)の試乗である。出遅れ感が多少あるが、試乗するのが遅いなら、それなりのメリットもある。

是か非か?GR86(ZN8)に搭載された4気筒DOHC 2.4Lエンジンの良し悪しとは?


GR86(ZN8)に試乗してみて圧巻だったのは、前モデルの2.0Lから2.4Lに排気量アップされたエンジンにありました。
ただ、パワフルな良いエンジンである反面、僕の感想としては納得いかないところもあり、疑問点もいくつかありました。
どの回転域からもトルクフルな4気筒DOHC 2.4Lエンジン
車に乗ってアクセルを踏んでみると、ものすごいトルクで車が加速していく。
このようなスポーツカーに乗り慣れていない人が、知らずにアクセルを踏むと、あまりのパワーに多少怖い思いをするかもしれない。それほどトルクフルなエンジンで予想外のパワーに驚いた。とても良いエンジンである。
エンジンの供給はスバルだ。2.4L水平対向4気筒DOHCであるが、昔のスバルの水平対向のような重苦しさは全く感じない。軽く吹け上がるレスポンスの良いエンジンに進化している。
最高出力は、235馬力だと言う。235馬力と言えば、僕が若い頃に乗っていた31スカイラインや、70スープラの2.0Lのターボモデルでも190馬力前後だったはず。
GR86(ZN8)に搭載されているFA24エンジンはNA(自然吸気)である。ターボは付いていない。それで235馬力ものパワーが出せるとは、昔なら考えられなかった。相当技術が進歩しているんだね。
試乗は、住宅地が近いところだったので、そんなにアクセルは踏み込めなかったが、どの回転域からも鋭い加速が味わえて、乗って楽しいクルマである。これぞスポーツカーと言ったところだろうか。
トルクフルなエンジンパワーをしっかり受け止めるダブルウィッシュボーンのリヤサスとトルセンLSD
GR86(ZN8)は、スポーツクーペならではのロングノーズ、ショートデッキのボディ形状だ。トルクフルなエンジンパワーは直線道路よりもカーブの際に感じやすい。トルクのあるパワーをダブルウィッシュボーンのリヤサスとトルセンLSDがしっかりと受け止めるのをオシリの下に感じながら走ることができる。やっぱりFRは楽しい!
やはりFRのスポーツカーには、独立懸架系のサスペンションとLSDは欠かせない。しかもトルセンLSDは街乗りでの扱いが易しくスムーズだ。トルセンLSDは、動きがとてもスムーズであり、コーナーで効きすぎて片輪が浮くような怖い思いをすることは全くない。乗っていて安心だし安全なのだ。
一部のユーザーが求める機械式LSDのような刺激には乏しいが、FRの車がそれだけ乗りやすくなったのだ。
出来れば、2.4Lにするなら6気筒にしてほしかった!というのは無理か?
GR86(ZN8)は前モデル同様、スバルからエンジンの供給を受けている。と言うよりトヨタとスバルの共同開発の車なのは皆さんもご承知の通りだろう。
久々にスポーツカーの発売をしたいトヨタと、AWDやFFは得意なスバルが、FRのスポーツカーを造ってみたいという思惑が一致しての共同開発だと聞いている。スバルもトヨタ同様、このモデルはSTIブランドからの発売となっている。
前モデルもスバルのエンジンで、2.0L水平対向4気筒DOHCエンジンである。それが、モデルチェンジで2.4LにボアアップされたエンジンがGR86に搭載されたのである。
これは、僕個人の意見だとして聞いて戴きたいのだが、どうせ2.4Lにするのなら、いっそのこと6気筒にして欲しかったといいう思いがある。スバルにはひと昔前に3.0Lの水平対向6気筒エンジンが存在しており、レガシィの一部のグレードに搭載されていたのだ。もっと昔のアルシオーネには、3.3Lの6気筒が搭載されていた。

上記の画像は、輸出版ではあるが2012年式あたりのスバル レガシィ アウトバックである。3.6L水平対向6気筒を搭載していた。
ただ、6気筒を搭載するとなると、エンジンがどうしてもタテに長くなるため、エンジンルーム内のスペースや、スポーツカーであるが故のコーナリングに大きく影響するのだろうか。4気筒のほうが取り回しが良く、生産上などの都合がよかったのだろう。それに今現在(2024年現在)のスバルには6気筒エンジンを造る余力が無いのかもしれない。それに、トヨタには、6気筒と言えば、上の車格のスポーツカーでは、GRスープラがある。
4気筒も6気筒も、それぞれにメリット・デメリットが存在する。4気筒のエンジンは低速でのレスポンスには優れているのだが、高速域での伸びには6気筒に劣る。6気筒はその逆だろう。直4と直6のエンジンの両方の車に乗った経験がある僕にはそのようなイメージがある。
でも、おそらく6気筒エンジンは、スバルは造る気は無いだろう。開発費もコストもかかるし、4気筒で売れている車のエンジンを改良する必要は無いのだから。
将来、ターボ化する可能性はあるのか?
2.4Lの水平対向DOHCエンジンは、NA(自然吸気)であるが、将来、ターボ化の可能性はあるのだろうか?
実際に、既に一部のチューニングパーツメーカーから、ボルトオンターボキットが発売されている。これだけの車だから、一部のユーザーからは、やはりターボへの需要があるのだろう。
HKS製 GR86(ND8)用 ボルトオンターボキット

キットの供給先のHKSによると、ブースト圧0.65kgf/㎠で366馬力、トルクは399kgf/mを発生させるようなのだ。上記の画像のようにタービンや、それに付随する周辺機材もスムーズにボンネット内に収まっているのがわかる。
TRUST GReddy製 GR86(ND8)用 ボルトオンターボキット
TRUST製のボルトオンターボキットもある。
最大出力は、ノーマル+50PSアップの290PSであり、HKS製に比べて控えめであるが、それでもそこそこのパワーが出せるのだ。
ただし、これらはチューニングメーカーだから成せる技なのであって、自動車メーカーが純正のターボとして出すのは難しいだろう。メーカーができない仕事は、このようなチューニングメーカーに住み分けられているのだ。ボルトオンターボを付けるようなユーザーはほんの一部だ。ほんの一部のユーザー向けに、自動車メーカーがそのようなことをするのは考えられない。
それに、今現在のトヨタのターボカーと言えば、GRスープラやGRヤリスと言った車が存在するため、Co2削減の問題もあり、これ以上メーカーとしてターボカーを出すのは難しいかもしれない。エンジン供給元のスバルとの兼ね合いもある。
今後どうなるのか、予想がつかないが期待するユーザーもいることだろう。
GR86(ZN8)を買うならどのグレードを選ぶ?ケース別グレードの選び方


いざ、GR86(ZN8)を購入しようということになれば、どのグレードにするか?という選択に迷うことがありますよね。
グレード選びは、通勤で使うか?休日のレジャーか?また、サーキットで走りを楽しむか?といった使い方によって変わってくるでしょう。
この項目では、ケース別のグレードの選び方についてお話しました。
グレードごとの価格を比較
グレード | トランスミッション | 価格(税込) |
RZ | 6MT | 3,518,000円 |
6AT | 3,616,000円 | |
SZ | 6MT | 3,195,000円 |
6AT | 3,293,000円 | |
Cup Car Basic | 6MT | 3,616,200円 |
GR86のグレードごとの価格は上記の表のとおり。
やはり、豪華装備やオプションの選択が可能なRZや、競技用車両としてのベース車両であるCup Car Basicは、高価になってしまう。
サーキットに行くなら、Cup Car Basic 一択!
じつは、GR86(ZN8)には、「Cup Car Basic」というグレードがある。
このグレードは、2021年まで開催されていたTGR 86/BRZ Raceを引き継ぐレースで、現行のGR86(ZN8)/SUBARU BRZ(ZD8)を使ったワンメイクレースで使用されている車両のことである。
この参加車両が全国のトヨタ販売店やスバル販売店で市販されているのである。この車両に搭載されている特別な装備を少し見てみよう。
主な装備 | 詳細 |
空冷式エンジンオイルクーラー | 安定的なレーススピードでの周回走行が可能な冷却性能を確保した空冷式オイルクーラー |
6点式シートベルト用アイボルト | 競技用シートベルトの装備を前提にしたアイボルトを運転席側に装備 |
ロールケージ(6点式+サイドバー) | 専用設計で、インパネ貫通式の6点式ロールケージ。JAF国内競技車両規則「スピードB」および「スピードSA」に適合したロールケージ。 |
専用フロアマット(運転席/助手席・ロールケージ対応・車両搭載) | 日常使用で、ロールケージへの干渉が無いように、カットされたフロアマット |
ワンメイクレースに参加するにも、しないにも、このような装備が新車時から付いているのは一部のユーザーからしたら大変ありがたいものである。こういう装備を後付けすると車検のことも考慮しないといけないし、ある程度の費用がかかるのである。それがメーカー公認でついているのだから、メーカーはエライ!と思ってしまうのは僕だけではないだろう。
その代わり、RZのような豪華な装備は一切付いていない。ホイールは16インチのスチール製だし、マフラーもカッターすらついていない裸のパイプのままである。これはマフラー交換を前提の装備なのであることが簡単に想定できる。
普段は通勤で車を使用して、休日はサーキットで走りたいと考えているユーザーにとっては、好都合のグレードであろう。
豪華装備や豪華オプションを付けたいのあればRZ!
GR86(ZN8)の最高級グレードであるRZには、とても魅力的な装備が標準装備およびオプション設定されている。
それらの一部の装備を見てみると、以下の通りだ。
装備名 | 詳細 |
タイヤ空気圧警報システム(TPWS) | 4輪それぞれの空気圧をマルチインフォメーションディスプレイに表示してくれる。タイヤの空気圧不足などを一目で確認できる優れもの。 |
スポーツアルミペダル(RZに標準装備、SZにメーカーオプション) | アクセル・ブレーキ・クラッチ・フットレストにアルミ素材のペダルを使用。レーシングカーのような気分を味わえる。 |
brembo(ブレンボ)製ベンチレーテッドディスクブレーキ(フロント・リヤ)(RZ・SZにメーカーオプション) | キャリパーは、フロント4ポッド、リヤ2ポッドの対向ポッドを採用。 |
ザックス ショックアブソーバー(RZ・SZにメーカーオプション) | 多くの純正OEM供給に携わってきたザックスのショックアブソーバーは、日常走行とスポーツ走行時の安定性を高い次元で両立。 |
上記の装備の中でも、圧巻なのがbrembo(ブレンボ)製のベンチレーテッドディスクブレーキだ。しかも対抗ポッドのブレーキキャリパーなのである!これと同じものを後付けで付けると50万円はする。これがメーカーオプションだと20万円で付けることができるのだ!これは凄い!
また、ザックス製のショックアブソーバーは、バランスにとても定評がある。これは一部の車好きのユーザーは当然知っているであろう。
若者の車離れが叫ばれて久しいが、日本の自動車メーカーは、車を乗る楽しさを知ってもらおうと懸命に努力しているのだ。これらを知ると、日本の車メーカーも、まだまだ捨てたもんじゃないなと感じることができて良かった。
トヨタ GR86 ギャラリー
車両重量(kg):1,270
車両総重量(kg):1,490
燃費 :11.7
市街地モード :8.0
郊外モード :12.8
高速道路モード:14.2
最小回転半径(m):5.4
[エンジン仕様詳細] 型式:FA24総排気量:2,387
種類:水平対向4気筒
使用燃料:無鉛プレミアムガソリン
内径×工程:94.0×86.0
最高出力(ネット)kW(PS)/rpm.:173(235)/7,000
最大トルク(ネット) N・m(kgf・m)/rpm.:250(25.5)/3,700
燃料タンク容量(L):50 [車両寸法・定員] 全長×全幅×全高(㎜9:4,265×1,775×1,310(アンテナを含む数値)
ホイールベース(㎜):2,575
トレッド フロント/リヤ(㎜):1,520/1,550
最低地上高(㎜):130
室内(長さ×幅×高さ)(㎜):1,625×1,480×1,060
乗車定員(名):4 [足回り/ブレーキ/駆動方式] サスペンション(フロント):マクファーソンストラット式コイルスプリング
(リヤ) :ダブルウィッシュボーン式コイルスプリング
ブレーキ(フロント/リヤ) :ベンチレーテッドディスク/ベンチレーテッドディスク
駆動方式 :FR(後輪駆動方式)
まとめ

いかがでしたでしょうか?
今回のお話は、大まかに言って、
●是か非か?GR86(ZN8)に搭載された4気筒DOHC 2.4Lエンジンの良し悪しとは?
●GR86(ZN8)を買うならどのグレードを選ぶ?ケース別グレードの選び方
でしたね。
GR86(ZN8)の試乗では、スポーツカーの進化を垣間見た気がしたのと同時に、メーカーがユーザーから喜ばれる車づくりを必死でやっているなと感じることができました。
特に、装備やメーカーオプションがとても魅力的であり、スポーツカーの魅力を多くの方々に知って欲しいという意気込みを感じることができて、良かったです。
やっと、GR86(ZN8)の試乗ができました。
ただ、良い意味で期待を裏切られたこともあり、ここ20年のスポーツカーの進化に驚いています。本当に速くなったなという印象です。
乗ったレビューと同時に、僕なりの意見も言わせて戴きました。購入を検討中の方の参考になれば幸いです。