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自損事故でも自動車保険は使える?

結論から言うと、自損事故でも自動車保険が使えるケースはあります。ただし、それは「どの保険に入っているか」によって大きく変わります。
電柱にぶつけた、壁に擦った、ガードレールに接触した――こうした相手のいない事故(自損事故)は、
・「保険を使えると思っていたのに対象外だった」
・「使えたけど、後から保険料が大きく上がった」
といった後悔が生まれやすい事故タイプです。
なぜなら、自損事故では
・対人賠償
・対物賠償
といった基本補償は原則使えず、車両保険の内容がすべてになるからです。ここではまず、
・「そもそも自損事故とは何か」
・「どんな事故が該当するのか」
を整理したうえで、保険が使える・使えない境界線を確認していきましょう。
自損事故の代表例(電柱・壁・ガードレール)

自損事故として扱われる代表的なケースには、次のようなものがあります。
雨天・凍結路でスリップし、ガードレールに接触
狭い道路で電柱を避けきれず、フロントや側面を損傷
これらはいずれも
✔ 相手車両なし
✔ 相手方の人物なし
という共通点があり、過失は100%ドライバー自身と判断されます。
「単独事故だから軽い扱いになる」と思われがちですが、保険の扱いとしては、むしろ判断がシビアになりやすい事故形態でもあります。
対人・対物賠償保険は原則使えない理由

自損事故では、「保険に入っているのに使えない」と感じる場面が多くなります。その理由は、対人・対物賠償保険の役割そのものにあります。
対人賠償保険・対物賠償保険は、「他人に与えた損害を賠償するための保険」です。
つまり、
ケガをしたのが運転者本人だけ壊れたのが自分の車だけ
という典型的な自損事故では、賠償すべき“相手”が存在しません。
このため、対人・対物賠償保険は原則として使えないという扱いになります。
「事故=賠償保険が使える」と思いがちですが、保険会社が補償するのはあくまで法律上の賠償責任が発生した場合です。
自分自身のケガや、自分の車の修理費については、
人身傷害保険搭乗者傷害保険
車両保険
といった別の補償でカバーする仕組みになっています。
だからこそ自損事故では、「どの保険が使えるのか」を正しく切り分けないと、想定外の自己負担が発生しやすいのです。
車両保険に入っていれば修理費は補償される

電柱や壁にぶつけてしまい、フロントやフェンダーが大きく損傷した――
このような自損事故で、**自分の車の修理費を直接カバーできるのが「車両保険」**です。
対人・対物賠償保険が使えない場面でも、車両保険に加入していれば、修理費用そのものが補償対象になります。
ただし注意したいのは、「車両保険に入っていれば、どんな自損事故でも必ず補償される」というわけではない点です。
実は車両保険には、
・補償範囲の広いタイプ
・自損事故が対象外になるタイプ
といった条件の違いがあります。
「同じ車両保険なのに、なぜ支払われないケースがあるのか?」次の見出しでは、車両保険の種類ごとの違いを具体的に見ていきましょう。
車両保険(一般条件)なら自損事故も対象

電柱や壁にぶつけたあと、車のボディに残ったキズやへこみを前にして、「これ、保険で直せるのかな……」と立ち尽くす。自損事故では、まさにこうした場面が現実になります。
このとき頼りになるのが、車両保険の「一般条件」です。車両保険(一般条件)は、
電柱・壁・ガードレールへの衝突単独事故によるボディ損傷
運転ミスによる自損事故
といった、相手のいない事故でも補償対象になるのが大きな特徴です。
今回のように、
・フェンダーの擦り傷
・バンパーの割れ
・ヘッドライト周辺の損傷
といった修理費は、車両保険から支払われる可能性が高いケースに該当します。ただし注意したいのは、「保険が使える=必ず使うべき」とは限らない点です。
車両保険を使えば、
・等級が下がる
・事故有係数が適用される
・翌年以降の保険料が上がる
といった影響も避けられません。
だからこそ、自損事故では「修理費」と「将来の保険料増加」を天秤にかける判断が重要になります。
「このキズ、自己負担で直すべきか?」
「それとも、保険を使ったほうが結果的に得なのか?」
といった判断が必要になってくることもあるので、注意が必要です。
エコノミー型では対象外になるケース

車両保険には、補償範囲が異なる大きく2つのタイプがあります。一般条件(オールリスク型)と、エコノミー型です。エコノミー型は、保険料を抑えられる一方で、補償される事故の範囲が限定的という特徴があります。
最大のポイントは、「相手のいる事故」が補償の中心だという点です。
たとえば、
他車との衝突事故当て逃げ(条件付き)
盗難・台風・洪水・火災などの自然災害
こうしたケースは、エコノミー型でも補償対象になることがあります。しかし一方で、
電柱・壁にぶつけた駐車時に柱や縁石に擦った
運転操作ミスによる単独事故
といった典型的な自損事故は、原則として補償対象外です。
つまり、「自分の運転ミスで壊した車を直したい」このニーズには、エコノミー型は応えられません。「車両保険に入っているから大丈夫」と思っていても、契約内容がエコノミー型だった場合、修理費は全額自己負担になる可能性が高いのです。
自損事故のリスクを考えるならエコノミー型は「安いけれど割り切りが必要な選択肢」。日常的に運転する人ほど、補償内容の確認が欠かせません。
自損事故で保険を使うデメリット


自損事故で車を傷つけてしまったあと、「修理費を考えれば、保険を使ったほうが楽かもしれない」そう感じるのは、ごく自然なことです。
しかし実際に保険会社の担当者と話をしてみると、“使える”ことと“使うべきか”は別問題だと気づかされます。
車両保険を使えば修理費は補償されますが、その裏では、
・等級ダウン
・事故有係数の適用
・将来の保険料上昇
といった長期的なデメリットが静かに積み重なっていきます。「今回だけなら仕方ない」と思って使った保険が、数年後に“想像以上の負担”として返ってくることも珍しくありません。
この章では、自損事故で保険を使った場合に起こる具体的な不利益を、数字と仕組みの両面から整理していきます。
等級ダウンと事故有係数の影響

自損事故で車両保険を使った場合、もっとも影響が大きいのが「等級ダウン」と「事故有係数」の適用です。
まず、自損事故は原則として保険事故扱いになるため、車両保険を使うと等級が3等級ダウンします。たとえば、20等級であれば17等級へ、15等級であれば12等級へ下がるイメージです。
等級が下がると、翌年の保険料は当然上がりますが、それだけでは終わりません。
ここで重要なのが、事故有係数(事故あり係数)です。車両保険を使うと、一定期間(通常は3年間)、「事故あり」の割増係数が適用されます。その結果、
等級が下がるさらに同じ等級でも割増率が高くなる
という二重の負担が発生します。
「3等級下がるだけなら何とかなる」と思っていても、事故有係数が重なることで、想像以上に保険料が跳ね上がるケースは珍しくありません。特に注意したいのは、修理費が数万円〜十数万円程度の自損事故です。
この金額帯では保険で修理費をカバーできたとしても「数年間の保険料増加分の合計が修理費を上回ってしまう」という逆転現象が起きやすくなります。
自損事故で保険を使うかどうかは、「今いくら戻ってくるか」ではなく、「数年単位で見て本当に得かどうか」で判断することが重要です。
次の項目では、保険を使うか迷ったときに役立つ具体的な判断基準を整理していきます。
翌年以降の保険料はいくら上がる?

自損事故で車両保険を使ったあと、多くの人が直面するのが「結局、保険料はいくら上がるのか?」という現実的な疑問です。
結論から言うと、影響は“翌年だけ”では終わりません。車両保険を使うと、
3等級ダウン事故有係数(事故あり係数)が適用
この2つが同時に発生し、数年間にわたって保険料が高くなるのが一般的です。たとえば、年間保険料が8万円前後だった人が、事故後には 9万円台〜10万円台に上がるケースも珍しくありません。
一見すると「年に1〜2万円の増加なら大したことない」と感じるかもしれませんが、これが3年間、4年間と続くと、合計で数万円〜十数万円の負担増になります。
ここで重要なのが、「修理費」と「将来の保険料増加額」を比べる視点です。修理費が
・5万円
・10万円
程度だった場合、保険を使わず自己負担で直したほうが、結果的に安く済むというケースは決して少なくありません。自損事故で保険を使うかどうかは、「今、いくら戻ってくるか」ではなく、「この先、いくら払い続けることになるか」を冷静に考えることが大切です。
次の章では、こうした状況を踏まえたうえで、保険を使うべきか迷ったときの判断基準を整理していきます。
保険を使うか迷ったときの判断基準

自損事故で車を傷つけてしまったあと、多くの人が最後に立ち止まるのが「この修理、保険を使うべきか?」という判断です。
保険を使えば、目の前の修理費は軽くなります。一方で、等級ダウンや事故有係数によって、数年先まで保険料が上がり続ける可能性もあります。
つまりこの場面では、「使えるかどうか」ではなく、「使ったほうが本当に得なのか」を冷静に考える必要があります。
ここからは、自損事故で後悔しないために、保険を使うか迷ったときに押さえておきたい具体的な判断基準を整理していきましょう。
修理費と保険料上昇額を比較する

自損事故で保険を使うかどうかを判断するうえで、まず冷静に比べたいのが「修理費」と「将来の保険料上昇額」です。多くの人は、「修理費が高いか・安いか」だけで判断しがちですが、それだけでは十分とは言えません。車両保険を使うと、
事故有係数の適用
によって、数年間にわたり保険料が上がるのが一般的です。たとえば、今回の修理費が 7万円 だったとしても、翌年以降の保険料が「年間+1〜2万円」それが3年続くとなれば、トータルで9万円以上の負担増になることもあります。
この場合、保険を使わず自己負担で修理したほうが、結果的に安く済むことになります。逆に、修理費が20万円、30万円と高額になる場合は、保険を使ったほうが合理的なケースもあります。
大切なのは、「今の修理費」だけを見るのではなく、数年単位での総支払額をイメージすることです。この比較ができるかどうかで、自損事故後の後悔は大きく変わります。
免責金額を忘れずに確認する

自損事故で保険を使うかどうかを判断する際、意外と見落とされがちなのが 「免責金額」 の存在です。
免責金額とは、事故が起きたときに 自己負担しなければならない金額 のことです。車両保険には、免責0円、免責5万円、免責10万円などの設定があり、契約内容によって大きく異なります。
たとえば、修理費が 12万円 だった場合でも、免責金額が 10万円 に設定されていれば、実際に保険から支払われるのは 2万円だけ です。このケースでは、
・等級ダウン
・事故有係数による保険料上昇
という将来のデメリットを背負ってまで、保険を使う意味がほとんどないことになります。
一方で、免責0円の契約で、修理費が高額な場合であれば、保険を使うメリットが出てくるケースもあります。だからこそ、自損事故が起きたときは、まず 修理見積もりと 保険証券の免責金額 を並べて確認することが重要です。
「いくら払って、いくら戻ってくるのか」この差額を把握するだけで、判断ミスは大きく減らせます。
事故直後にやるべき対応ポイント

事故直後は、気が動転していて「とにかくどうすればいいのか分からない」という状態になりがちです。
自損事故は相手がいない分、警察や保険会社への連絡を後回しにしてしまう人も少なくありません。しかし、この最初の対応が、その後の補償や手続きを大きく左右します。
連絡の順番を間違えたり、必要な対応を省いてしまうと、あとから「保険が使えない」「手続きがスムーズに進まない」といったトラブルにつながることもあります。
ここでは、自損事故を起こしたその直後に、必ず押さえておきたい対応ポイントを順を追って確認していきましょう。
警察への届け出は必要?

結論から言うと、自損事故であっても、警察への届け出は原則として必要です。
「相手もいないし、軽い事故だから大丈夫だろう」と判断して、そのまま帰ってしまう人もいますが、これはあとから大きな不利益につながる可能性があります。
警察へ連絡する最大の理由は、交通事故証明書が発行されるかどうかにあります。
自動車保険を使って修理費の補償を受ける場合、多くの保険会社では交通事故証明書の提出が必須となります。警察に届け出ていない事故は、
・事故として正式に記録されない
・証明書が取得できない
結果として、保険が使えない、または手続きが大幅に遅れるといった事態になりかねません。
また、電柱やガードレール、標識などを損傷した場合は、それらは 公共物・第三者の財産にあたります。この場合、軽微に見えても届け出義務が発生するケースがほとんどです。
ケガ人がいない自損事故であっても、110番、または管轄の警察署に連絡し、事故が起きた事実をきちんと伝えることが重要です。
「念のため警察に連絡しておく」この一手間が、あとで保険をスムーズに使えるかどうかを分けます。
修理前に保険会社へ連絡すべき理由

電柱や壁にぶつけてしまった自損事故では、「相手がいないのだから、先に修理しても問題ないのでは?」と思ってしまいがちです。しかし、自損事故こそ修理前の保険会社連絡が重要になります。
まず、自損事故で保険を使う場合、補償の可否は契約内容(車両保険の種類)と事故状況の確認が前提となります。
修理を先に進めてしまうと、保険会社が
単独事故として補償対象になる状況か
修理内容・金額が妥当か
を判断できず、保険金の減額や一部不支給につながるリスクが生じます。
特に注意したいのが、エコノミー型(車対車+限定危険)では自損事故が補償対象外になるケースが多い点です。
この場合、事前に連絡せず修理を進めてしまうと、「そもそも保険は使えなかった」という事実が後から判明することもあります。
また、保険会社へ先に連絡することで、
事故状況の伝え方写真撮影のポイント
修理見積もりの提出タイミング
などを具体的に指示してもらえるため、無駄な修理や手戻りを防げるというメリットもあります。
「保険を使うかどうか、まだ決めていない」という段階でも構いません。自損事故を起こしたら、修理前に一度保険会社へ連絡する――これが、後悔しないための基本対応です。
まとめ|自損事故こそ「使う・使わない」の判断が重要

自損事故は、相手がいないぶん「自己責任で終わり」と片付けたくなる一方で、実は保険を使うかどうかの判断が、その後の出費を大きく左右します。
ここで大事なのは、“保険を使えるか”ではなく、「使った結果、トータルで得か損か」を冷静に比べることです。あなたは今、感情で決めていませんか?
判断の軸はシンプルです。
まず、修理費がそこそこ高いなら、車両保険を使う価値は出てきます。ただし同時に、等級ダウン(多くは3等級)+事故有係数適用による保険料アップが数年続く点も忘れられません。つまり、「今回の修理費」vs「今後数年の保険料増+免責分」の勝負になります。
具体的には、次のチェックで迷いが減ります。
修理費が免責金額に近い/免責を超えない → 使っても手元負担が残りやすく、メリットが薄い軽微な損傷で走行に支障がない → 使わず自己負担で済ませたほうが“総額”で安いことが多い
修理費が高額(バンパー交換・ライト・足回り等) → 使う価値が出やすい
来年以降に車の乗り換え予定がある → 使うと将来の保険料負担が重く感じやすい(慎重に)
そもそも契約がエコノミー型等で自損が対象外 → 使えない前提で最適ルートを選ぶ
そして、後悔しがちな落とし穴が「先に修理を進めてしまう」こと。自損事故でも、保険会社の確認(写真・見積もり・損害状況の整理)を踏んでから動くだけで、手続きの手戻りやトラブルを避けられます。
結論としてはこうです。
自損事故は、“使う・使わない”のどちらが正解でもおかしくない場合が多いです。だからこそ、焦らずに「修理費」と「将来の保険料増」を天秤にかけて、あなたの家計にとって一番痛くない選択をするのが正解です。
――その判断こそが、自損事故で一番大事な“事故対応”になります。


「電柱にぶつけてしまった…」「壁に擦ってしまった…」
相手がいない自損事故は、事故直後よりもその後の判断で後悔が生まれやすいトラブルです。
「この程度なら保険を使うべき?」
「等級が下がるって本当?」
「結局、自己負担の方が安いのでは?」
この記事では、自損事故×自動車保険にフォーカスし、
✔ どんな保険なら使えるのか
✔ 使った場合のデメリット
✔ 使うか迷ったときの判断基準
を事故対応カテゴリらしく“実務目線”で整理していきます。