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車を買取してもらう際に、たまに耳にするのが、
「事故車だから値段がつかない!」とか、「俺の車は修理歴があるから査定で値段を叩かれた!」と聞くのですが、どこまでが本当でしょうか?

修理歴・事故歴・修復歴の違いと、買取(売却)する際に及ぼす影響


よく耳にする話が、「事故車は値段が付かないから売れない」とか「修理歴があるから査定金額が下がる」というのがありますが、本当にそうでしょうか?
実際に、買取を行う中古車業界の常識と、我々ユーザーの認識とは少し違っていたりします。この項目では、どのような修理歴や事故歴が車買取(売却)の査定に影響するのか?しないのか?についてお話しました。
骨格部分の修復歴がなければ査定に影響しない!
結論から言ってしまいますと、車の「骨格部」の修復履歴がなければ買取の査定にはそれほど影響がありません。
我々ユーザーは、自分の愛車が修理歴があったり、事故をしたことがあると、車の買取の査定に影響があるだろうという思い込みがあるようです。「俺の車は事故車だから売れない!」とか、「ドアを交換しているから高く売るのは不可能だろう」という具合ですね。
でも、我々ユーザーと、買取を行う中古車業界の、中古車に関する常識は少しだけ違うのです。
それは、車の「骨格部分」の修復履歴が有るか否かによって、査定への影響は大きく変わってきます。査定に影響する「修復歴」と呼ばれるものと、査定にほとんど影響のない「修理歴」と呼ばれるものとは、車の修理や交換を行った部位によって違ってきます。

修理歴 | 修復歴 |
車の修理や交換を行った部位 | 車の修理や交換を行った部位 |
・ドア ・エンジン ・バンパー ・ボンネット ・ボディ(傷)の塗装 ・フロントガラス(割れ・ヒビ) ・リヤウィンドウ ・フロントフェンダーなど |
・ピラー ・フレーム ・ルーフパネル ・フロアパネル ・ダッシュパネル ・クロスメンバー ・トランクフロアパネル ・フロントインサイドパネル |
査定への影響:なし | 査定への影響:あり |
上記の画像や表のとおり、車の骨格部分の修理や交換があれば、「修復歴」と呼ばれ、査定に影響します。ところが、仮に大きな事故をしても、ドアやボンネットを交換したり、ボディの塗装や割れたフロントガラスを交換しても、中古車買取業界では「事故車」とは呼ばず、査定にもほとんど影響しません。
反面、車の骨格部分であるフレームやピラーを修理したり交換した場合、その車は「修復歴車」と呼ばれ、買取時(売却時)の査定には大きく影響するのです。
参考文献:日本自動車査定協会 修復歴の判断基準一覧
車の骨格部分の修復歴が査定に影響する理由
車のドアやフロントガラスの損傷や交換があっても修復歴とはならないのに対し、車のフレームやピラーなどの骨格部分を修理したら修復歴となるのでしょうか?
理由は、車の骨格部分であるフレームやなどはとても硬く頑丈に造られています。それが一度損壊してしまうと、元通りの強度にはなりにくいのです。
紙でできたお菓子の箱などをつぶしてしまうと、元のような形に手でもどしても綺麗に元通りの形にはなりませんよね?強度も相当低下します。それと同じような現象が車のフレームなどの骨格部分で起きるという訳です。
フレーム修正を施して修復をした車は、まっすぐ走らなかったり、ハンドルがブレたりする現象が起きたり、自動ブレーキなどの安全装置が正常に作動しないなどの懸念があったりします。
中古車の査定では、そのような修復歴のある車に対しては、査定を厳しくしているという訳です。
修理歴や事故歴があっても、骨格部分の修復歴がなければ申告する必要がない!
先述しましたが、車の骨格部位に損傷があると走行に不具合が生じやすいため、修復をしたとしても販売する際には、「修復歴あり」と表示することが義務付けられています。
反面、事故や修理歴があっても、車の骨格部分の修復歴が無ければ、事故車だという申告は必要がありません。理由は、もしドアやボンネットを損傷して板金修理をしたり部品を交換したとしても、修理をしてしまえば見た目や機能は元通りになるので走行するのに支障がないわけです。
僕の若い頃、友人が新車で購入したZ31型フェアレディZで大きな事故を起こしました。エンジン周辺まで損傷するという修理金額も7桁になるほど車は大きく損傷したのですが、幸いフレームなどの骨格部分は無傷であったため、その後売却する際に事故車扱いはされませんでした。そのため割と高い値段で買取をしてもらえたようです。
ただ、例を挙げると、ドアを交換する修理をした際に、ピラーまで交換するような修理だと「修復歴」に該当し、事故車扱いとなるのです。
「修復歴あり」となるかどうかの判断は、フレームなどの車の骨格部分の修復や交換が該当するのだと覚えておいて下さい。
修復歴のある車を買取してもらう(売却する)際の注意点


修復歴がついてしまった車であっても、できるだけ高く買い取ってもらいたいもの。
ここでは、修復歴のある車をできるだけ高く買取してもらう方法や心構えについてお話しました。
修復歴があることを申告する
もし、あなたの車に修復歴がある場合、買取してもらう際には修復歴を買取業者に告知する義務があります。告知をせずに意図的に修復歴を隠して売却すると「告知義務違反」や「契約不適合責任」に該当し、無条件で解約になってしまいます。
そればかりか、損害賠償を請求される懸念もありますので、注意が必要なのです。
修復歴のあるなしは、買取の際にプロの査定士が査定を行う際に、簡単に発覚します。
僕自身は、フレーム等を修復するほどの車を保有した経験はありませんが、以前にNHW20プリウス(2代目プリウス)を売却する際に査定をしてもらったことがあり、そのチェックポイントのリストを見たことがあります。
ダッシュボードのひび割れや破損
工具の使用痕(ねじ山など)
シャーシ底部
左右対称性
スポット溶接や継ぎ目の溶接痕など
ドアやトランクを開けてのぞき込んだり、車の下に潜りこんだりして本当に全部を隈なくチェックしていました。買取(売却)の査定の際に嘘をつこうとは思いませんが、もし嘘をついていても絶対に発覚するなと感じました。
もし、あなたの愛車に修復歴があるのであれば、包み隠さずに申告したほうが良いでしょう。先述した通り嘘をついていても絶対に発覚しますし、買取(売却)の際に売る方も買う方もお互いに遺恨を残してしまう恐れがあります。
いくらシビアな査定をすると言っても、査定士も人間です。事故車である故に本当は値段が付かないような車両であっても、修復歴があることを最初から正直に詳細に申告することで、気持ちばかりの値段を付けてくれるかもしれません。
査定額が大きくダウンすることを理解しておく
修復歴がある車を買取してもらう場合は、修復歴がない場合に比べると、査定額が大きくダウンすることは覚悟しておいて下さい。
「修復歴車」として再販するか、もしくは部品取り用の車両として売却するかは、買取業者側の判断です。後述しますが、売却する側は、より高く買い取りしてくれそうな業者を探せば良いのです。
程度によっては廃車を考えた方が良い場合もありますので、まずは査定をしてもらってから考えても遅くはないでしょう。
事故の修理をした際に、修理の程度によっては「評価損」が発生する懸念がある!
車事故の評価損とは、事故によって損傷した車を修理した後に、事故前の車両価格と修理後の車両価格の差額を指します。修理が十分にできて、見た目が綺麗になった状態であっても、発生する可能性があります。
評価損が発生する要因としては、いろいろなケースがありますが先述したとおり、事故によって車のフレーム等にゆがみが発生した場合、損傷した部品を交換しても事故前の状態に戻すのは難しいのです。
事故を起こしてしまった原因がこちらの過失ではなく、相手側の過失の場合もあるかと思います。
信号待ちで停止をしていた際に後方から追突された場合などがそれにあたります。この場合、こちらの車の修理費用に関しては保険適用になりますが、評価損の分までの保険適用は無いのが現状です。
この場合、正しい手続きと準備を行うことで加害者や保険会社から適切な保証を受け取ることが可能です。実際のケースでどのくらいの評価損が認められるかについては、弁護士に確認したほうが良いでしょう。
正しい手続きや抑えておきたいポイントは以下の通りです。
事故減価額証明書を取得する
同車種の相場価格を調べておく
評価損を認定した判例を提示する
上記の中の「事故減価額証明書」の取得の仕方についてお話しておきましょう。
事故減価額証明書の取得の仕方
事故減価額証明書とは、事故などによって修復歴がついてしまった車の評価損分を証明する書面のことです。この証明書は、一般財団法人日本自動車査定協会によって発行されます。

事故減価額証明書の取得に必要な書類
自動車損害賠償責任保険証明書(自賠責保険証)
整備手帳(保証書)
修理見積書の写し
査定する車両
事故減価額証明書の発行の手続きの流れ
2.事故内容の詳細を説明する
3.査定をしてもらう日時を設定する
4.指定の日時に査定する車を持ち込む(出張査定してもらう)
5.査定を受ける
6.査定終了後、後日事故減価額証明書が発送されてくる
引用先:一般財団法人 日本自動車査定協会
日本自動車協会は第三委員会であるため、示談交渉に関与することはありません。あくまでも公正な立場で事故減価額証明書の発行が業務になります。
示談交渉は、自分で行うか、弁護士を雇うかで対処しましょう。
修復歴車の適切な処分方法


「修理歴がついてしまった車は、全く値段が付かないのか?」いいえ!そんなことはありません。修理歴車でも、まずまずの金額で買い取ってもらえる可能性があります。
では、どのようにすれば買取額0円を避けて、できるだけ高く買取してもらえるでしょうか?それについて考えてみましょう。
修理をせずに買取(売却)する
修復を含む修理をして売却をした場合、修理代が査定額よりも高くなってしまうケースがあります。特にフレーム等の修復の場合は、修理代が高額になってしまうケースが多く、かといって車が事故前の状態に戻るケースはとても稀であると考えたほうが無難です。
その面、中古車買取業者は、自社で修理工場を保有していることが多く、一般ユーザーに比べて比較的安い費用で修理できます。どうするかは買取業者に相談したほうが良いかもしれません。
昨今の日本車は、海外でとても人気があるため、海外への販売ルートを持っている業者なら通常の買取業者よりも高い金額で買取をしてもらえる可能性もあります。
初めて車を売却する方や、できるだけ高い金額で売却したい方は、買取実績が豊富な業者を選んで買取をしてもらうようにすれば良いでしょう。
事故車・廃車専門買取業者に買取(売却)する
通常、車買取業者は買い取った車を中古車として再販するのを前提として査定をするため、フレーム等の損傷が激しかったりすると買取額が大幅に減少してしまう傾向があります。
一方で、廃車買取業者は、車を部品ごとに買取することができるため、中古車として再販するよりも高い金額で買取してもらえる場合があります。それも踏まえて「廃車専門買取業者」への売却も検討してみましょう。
まとめ

いかがでしたでしょうか?
今回のお話は、大まかに言って、
●修理歴・事故歴・修復歴の違いと、買取してもらう際に及ぼす影響
●修復歴のある車を買取してもらう(売却する)際の注意点
●修復歴車の適切な処分方法
でしたね。
「修理歴」「事故歴」「修復歴」の意味や違いは理解して戴けましたか?
今回は、ユーザーの我々が決して損をしない事故車や修理歴車、修復歴車の買取(売却)の方法についてお話しました。今回のお話が皆さんの参考になれば幸いです。
実際に我々ユーザーがイメージする「事故車」や「修理歴車」と車の買取を行う中古車業界の常識は少し違うようです。今回は、修理歴車や事故車、また「修復歴車」の意味と違い、高く買い取ってもらう方法についてお話しました。