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車検の規制が以前に比べて、厳しくなってきています。
特にマフラーに対する規制は、我々が知らぬ間に規制が変わってきているのです。
車検に通るマフラーの最低条件
実は、マフラーの車検対応の基準は、だんだんと厳しくなってきています。
排ガス規制が以前にも増して厳しくなってきているのは、世界的なCo2削減の一環じゃないかと思いますが、新しい基準を理解せずに、社外品に換えたマフラーが車検に通らない!なんてことが起こってしまう恐れがあります。
この項目では、最低これだけは知っておきたい、車検に通るマフラーの最低条件についてお話しました。
取付位置
車検に通るマフラーの条件ですが、取付位置の基準について説明します。
ただし、テールエンド部分に丸みがついており、なおかつ、2.5㎜以上の曲率半径を有するものであれば、フロアラインを含む鉛直面から10㎜を超えて突出してもよい。
自動車の外装表面には、曲率半径が2.5㎜未満である突起があってはならない。ただし、突出量が5㎜未満の突起である場合、突起の外向きの端部に丸みが付けられているものであれば良し、また、突出量が1.5㎜未満であればこの限りではない。
最低地上高は90㎜以上有してないといけない。
また、マフラーのテールエンド(出口)の向きについては、以前は進行方向に対して30度以内という規定がありましたが、平成29年6月22日に廃止されています。
音量(近接排気騒音)
マフラーの音量の規制も気になるところですね。
マフラーの音量の測定の仕方は、「近接排気騒音」と呼ばれ、測定の仕方にも決まりがあります。
車を暖気運転し、十分にマフラーが暖まったところで、車は停車状態のまま、ギアをニュートラルにし、最高出力回転数の75%までエンジンを回した状態を一定時間(5秒以上)保持し、その後急激にアクセルをアクセルを離し、アイドリング状態になるまでまでの最大音量値を測定します。
例えば、トヨタのGR86(ZN8)だと、最高出力を発揮する回転数は7,000回転(rpm)ですので、その75%ですと5,250回転(rpm)までエンジンを回して測定するわけです。
この時、測定に使用するマイクロホンは、マフラーの出口(エンドパイプ)から50㎝離して、マフラーの出口(エンドパイプ)より45度後方に設置して測定を行います。
路面が乾燥しており、風速が5メートル以下の条件で行うこと。
騒音計の設定は、周波数補正がA特性、動特性をFASTとして測定すること。
となっています。
実際の音量の基準は、車両重量によって違ってはきますが、下記の数値だと覚えておくと良いでしょう。
軽自動車:97dB
触媒の有無
結論から言えば、一部の車種を除いて触媒が付いていない車は、車検にはまず、通りません。
「触媒」とは、エンジンが排出する有害物質を浄化するために、マフラーに取り付けられているフィルターです。
触媒が取り付けられている箇所は、車種によって違いますが、多くの車はマフラーのフロンパイプからテールエンドの中間ぐらいの箇所に取り付けられていることが多いです。
この触媒が無ければ、有害物質を大気中に放出させてしまうこととなり、人体や環境に悪影響を与えます。車検においては炭化水素(HC)と一酸化炭素(CO)の濃度の試験が行われるため、触媒を付けていないとクリアすることができません。
純正マフラーを装着している場合であれば、触媒が劣化していない限り問題ありませんが、社外品のマフラーに交換している場合は、注意する必要があります。
ちなみに、道路運送車両の保安基準第31条によると、ガソリン車の場合はCO基準値が1.0%、HC基準値は300ppmとなります。検査方法は、「プロ―プ」と呼ばれる検査棒をマフラーに入れて、濃度のチェックを行います。
車の年式や車の状態によって変わる!車検対応マフラーや保安適合基準マフラーでも、車検に通らないこともある!
愛車のドレスアップやチューニングの一環として、マフラーを社外品に交換する場合は、注意が必要です。
「車検対応品」と明記していても、車の年式や車の状態のよって、車検に通らないってこともあるのです。この項目では、それらの様々なケースについてお話しました。
JASMAとは?
「JASMA」とは、(一社)NAPAC・JASMA事業部と言い、前身は、日本自動車スポーツマフラー協会のことです。
自動車スポーツマフラーの普及促進を図るため、日本国内の自動車マフラーメーカーにより、1989年に設立された団体であり、主に自動車スポーツマフラーの普及促進を行うため、保安基準適合や排ガス、騒音防止、熱害防止といったマフラーによる不正改造防止を推進しています。
2024年12月現在のJASMA事業部は、東京都品川区五反田に事務局があります。
JASMAが認定したマフラーには、車両形式、エンジン型式ごとに自動車排気騒音を測定し、登録された製品に対して認定した番号を刻印したプレートが貼られています。
ただ、規制が変わった年月日をまたいで貼られているプレートが違いますので、それによって保安基準に適合するかどうかの判断が可能です。
2010年(平成22年)3月31日以前に生産された車両の場合
JASMAプレート
JASMAプレートは、2010年(平成22年)3月31日までに製造された自動車が対象になります。
車両形式およびエンジン型式ごとに、自動車排気騒音を測定し、事業部へ申請を行い、登録された製品に対して認定された番号が刻印されています。
また、申請された実測値データーは、協会へ登録され、全国の運輸局、運輸支局、自動車検査登録事務所、自動車検査法人、軽自動車検査協会にデーターを公表することによって、車検の際にスムーズな受験が可能になります。
2010年(平成22年)4月1日以降に生産された車両の場合、「加速走行騒音値」の項目が追加!
平成22規制会員専用プレート
平成22規制会員専用プレートは、2010年(平成22年)4月1日以降に製造された自動車が対象になります。
車検時において、それまでに義務付けられていた「近接排気騒音値」にプラスして「加速走行騒音値」の項目が新たに追加されました。それによって、性能等確認機関にて試験を実施し、「性能等確認表示番号」の表示が義務付けられています。
これらの事項は、車検証にも明記されています。
ご自分の愛車の車検証を確認してみると良いでしょう。従来の近接排気騒音値にプラスして、加速走行騒音規制の適用があるという文言が明記されているのがわかると思います。
マフラーを交換する際に注意すべきこと!
カーショップなどで、新品のマフラーを購入して交換する場合は大丈夫なのですが、ヤフオクやラクマ、メルカリなどのフリーマーケットで中古品のマフラーを購入する場合は注意が必要です。
もし、愛車が「平成22規制」の車なのに、「JASMAプレート」(平成22年3月31日までの生産車対応)のマフラーを買って取り付けてしまい、その状態で車検を受けると、車検に通らないという事態が発生する懸念があるのです。まして、フリーマーケットの場合は、売主が「ノークレーム、ノーリターン」を条件に売買をするケースが多いですよね。
落札した商品が自宅に到着して、車検に通らないことが判明しても、返品することができないという事態が発生してしまうわけです。
中古品のマフラーを購入する際は、このプレートに注意して購入するようにしましょう。
騒音低減機構(サイレンサーなど)を容易に除去できる構造の禁止
サイレンサーなど、騒音を低減できるパーツを装着する場合は、注意が必要です。
サイレンサー自体は違法ではありませんが、以前多かったねじ止めによるサイレンサーの取付は違法になりました。いわゆる「インナーサイレンサー」というものですね。
サイレンサーを取り付ける場合は、ねじ止めのような容易に取外しができる方法ではなく、溶接をするなど、「内部組込み式」のように、カンタンには外れないような取り付け方でないと、車検には通らなくなりました。
だんだん厳しくなる「近接排気騒音規制」
我々が知らないうちにだんだんと厳しくなっていくマフラーに対する規制ですが、急に厳しくなったのが、2016年(平成28年)規制からです。
今後どうなるか予想がつかないですが、しっかりと制度を理解しておきたいですね。
「平成元年(1989年)規制」とは?
僕が車の運転免許を取得して、「さあ、これから楽しいカーライフの始まりだ!」と喜び勇んでいた頃は、まだ世の中に「車検対応マフラー」というものは出回ってなく、社外品のマフラーは全て触媒すら付いていない「ストレートマフラー」が主なものでした。
その頃は、改造車に対する検問があちこちで行われており、マフラーを交換しているだけでも整備不良でキップを切られ、期限までにノーマルに戻して、警察に見せに行かされた記憶があります。
それが、昭和が終わり、平成に入ると「車検対応マフラー」たるものがカーショップで販売されようになったのです。
これは、昭和63年から導入された「近接排気騒音規制」でエンジンの搭載方法に関係なく、「103dBまで」と規制されています。
規制が急に厳しくなった「平成28年規制」
排気騒音の規制が急に厳しくなったのが、2016年(平成28年)の規制です。
同年10月1日以降に生産が始まる国産の新車、または2022年(令和4年)以降生産の輸入車や後続生産車が、下記の通りの騒音値の規制になりました。
車両後部にエンジンを搭載する車以外 | 91dB |
車両後部にエンジンを搭載する車 | 95dB |
2016年(平成28年)11月30日に新車時からの「相対値規制」が導入される
これまでは、車検の際に近接排気騒音値の値を超えない絶対値が規制の値でしたが、2018年(平成30年)11月に国土交通省が通達した規制で「新車時からプラス5dBを超えないこと」という「相対値規制」が導入されました。
要するに相対値規制とは、交換用マフラーを装着した際に、車の近接排気騒音が、新車時の騒音から悪化しないことを確認する規制です。
車種ごとに定められた一定の値
乗合車・貨物車(車両総重量3.5t超、最高出力150kW超) | 94dB |
乗合車・貨物車(車両総重量3.5t超、最高出力150kW以下) | 93dB |
乗合車・貨物車(車両総重量3.5t以下) | 92dB |
乗用車(車両後部にエンジンを有するもの) | 95dB |
乗用車(車両後部にエンジンを有するもの以外) | 91dB |
相対値規制は、車種ごとに定められた一定の値を超える4輪自動車に交換用マフラーを装着する場合に適用されます。ただし、2010年4月1日に施行された「マフラー性能等確認制度等」に基づいて、性能等が確認されたマフラーに交換した場合は相対値規制は適用されません。
「交換用マフラー事前認証制度」とは?
交換用マフラー事前認証制度とは、交換用マフラーにおいて、しっかりとした騒音防止性能を保持したマフラーを普及させることを目的として、自動車検査独立行政法人「審査事務規制」に基づいて、その騒音防止性能を予め確認機関(性能等確認機関)が確認を行い、合格したマフラーについては、「性能等確認表示」を表示することができる制度です。
いろいろあって、ちょっとややこしいですね。でも、しっかりこれらを理解しておくことで、車検で引っかかって余計なお金を使わずにすむのですから、熟知しておくのに越したことはありません。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
今回のお話は、大まかに言って、
●車検に通るマフラーの最低条件
●車の年式や車の状態によって変わる!車検対応マフラーや保安適合基準マフラーでも、車検に通らないこともある!
●だんだん厳しくなる「近接排気騒音規制」
でしたね。
マフラーに対する規制は、いろいろややこしくて厳しい規制ですが、車検にちゃんと通る社外品のマフラーに交換する場合は特に注意したいですね。
この記事の内容を全て理解する必要はありません。車検にちゃんと通るためには、
・自分の愛車の年式を把握する
・社外品のマフラーに交換する場合は、自分の愛車の年式に合った規制のマフラーを選ぶ
と言うことが、車検で引っかからないコツではないでしょうか。
社外品のマフラーに交換する場合は、特に注意が必要です。各マフラーメーカーも、規制にはしっかりと対応してくれているようですが、ユーザー側の我々が規制を理解しておいたほうが良いかと思います。
今回は、車検に通るマフラーについてお話しました。